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自民党と日本維新の会が、安全保障3文書（国家安全保障戦略など）の改定に向け、年内にも協議を始める方向で調整に入った。防衛装備移転3原則の運用指針で完成品輸出を絞る5類型の撤廃も論点となる。与党として政府に提言をまとめる構えで、年明けの国会に向けた設計図づくりが動き出した。
年内の協議へ、与党内で走り出す
両党の幹部は協議体の設置準備を進めていると明かし、まずは実務者レベルの意見交換から始める見通しだ。連立発足後、外交・安全保障の政策調整は優先課題とされ、合意事項に沿って改定時期の前倒しや論点整理を詰める段階に入った。年末までの工程感をすり合わせ、論点の棚卸しを急ぐ。
政権側では、高市早苗首相が所信表明演説（2025年10月24日）で安全保障政策の立て直しに言及し、抑止力と産業基盤の強化を掲げた。与党協議は、その方向性を具体の制度や数値に落とし込む工程として位置づく。装備体系や研究開発、同盟国との連携枠組みまでを一体で見直す視点が求められる。
協議の成果は与党の提言として政府に提出され、内閣の方針や関連法令の改正作業に接続する。工程の見通しが共有されれば、通常国会に向けて条文化の準備が加速する。与党として一本化した考えを示すことで、調達や人員配置など現場の計画にも予見性が生まれる。
5類型の撤廃がもたらす波紋
防衛装備移転3原則（防衛装備の海外移転ルール）は、運用指針で完成品輸出を限定してきた。5類型（完成品輸出を認める5つの用途）の撤廃が検討対象に上るのは、パートナー国との装備協力を柔軟にし、産業の裾野を広げる狙いがあるためだ。現行枠組みの運用では実績が限られるとの指摘もあり、制度の再設計が俎上に載る。
実務面では、共同開発に依存してきた供給形態を見直し、国内で設計から製造まで担う案件の比率を高める選択肢が浮上する。保守・整備や部品供給まで含めた長期契約が増えれば、雇用や研究投資の循環にも波及する。受注の谷間を縮め、企業が継続的に技術を磨けるかが鍵になる。
一方で、目的外使用の防止や再移転管理、透明性の確保といった歯止め設計は不可欠だ。輸出審査のプロセス、国会への定期報告、契約後のエンドユース確認など、信頼を担保する仕組みを強化しなければ、制度改定は持続しない。地域情勢の変化を踏まえた停止条項やレビューの周期も、制度の強度を左右する。
財政と産業基盤、現実解を探る
安保3文書の改定では、防衛力整備の水準や配分の見直しも焦点になる。装備移転の規律緩和と財政運営は表裏一体であり、研究開発から量産、維持整備に至る資金の流れを途切れさせない道筋を描けるかが問われる。訓練や運用支援を含む包括契約を通じ、予算の平準化を図る発想が求められる。
国内の中堅・中小サプライヤーは、短期の受注変動に脆弱だ。輸出案件の平準化や在庫・人材の共同プール、標準部品の共通化など、供給網を守る具体策が鍵になる。輸出先とのライフサイクル支援をセットにし、サービス収益で谷間を埋める仕組みも現実的だ。制度改定は産業政策と同時に進める必要がある。
与党協議は、抑止力の実効性と民主的統制の両立をどう形にするかという作業でもある。装備移転の拡大を図るなら、情報公開と説明責任を段階的に制度化し、国内外の信頼を積み上げていくことが、結果として安全保障を厚くする。足元の合意形成の積み重ねが、先の見通しを静かに広げていく。
