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三菱造船や今治造船、国内大手海運各社など7社が12月1日、液化CO2(LCO2)輸送船とアンモニア燃料など新燃料船の標準設計づくりで覚書を交わした。次世代の環境対応船を、設計段階から横串でまとめる試みだ。脱炭素と国際競争力の両立に悩む日本の造船・海運にとって、この枠組みはどんな意味を持つのか。
現場の造船所に広がる「共通設計」
覚書では、三菱重工グループの設計会社MILESが対象船の開発と基本設計を担い、国内の造船所が共通の図面をもとに機能設計や生産設計を行う仕組みとした。ばらばらだった初期設計を束ねることで、船型ごとにシリーズ建造しやすくし、日本の造船現場の負担を減らす狙いがある。今回の枠組みが、日本勢の競争力を立て直す足場になりうるかが焦点だ。
対象となるのは、発電所や工場から回収したCO2を液化して運ぶLCO2輸送船や、アンモニア燃料を使う新燃料船などだ。こうした船は安全基準も技術要件も厳しく、1隻ごとに設計を変えるとコストが膨らみやすい。標準設計を共有すれば、複数の造船所が同じ仕様で受注しやすくなり、部材調達や建造工程の平準化にもつながると期待されている。
なぜ今、標準化なのか――過去の動きとの違い
7社はすでに2024年から、LCO2輸送船の標準仕様づくりに関する共同研究を進めてきた。2028年頃までに国際的なCO2海上輸送を本格化させる構想も掲げており、今回の覚書はその検討を「実際に建造できる設計」に落とし込む段階と言える。研究中心だった動きから、ビジネスとして受注を取りに行くフェーズへと軸足を移しつつある。
一方で、欧州や韓国の大手造船企業は、LNG船などで早くからシリーズ化と標準設計を進めてきた経緯がある。日本勢は高い技術力を持ちながら、顧客ごとに仕様を細かく変える受注生産色が強く、設計リソースが分散しやすかった。LCO2や新燃料船で同じ構図を繰り返せば、大量建造を武器にする海外勢との価格競争で不利になりかねない。
投資とリスクをどう分け合うか
そこで今回の枠組みでは、海運3社が設計会社MILESへの出資を決め、ジャパン マリンユナイテッドや日本シップヤードなど造船側も資本参加する。運航会社と造船所が同じプラットフォームに乗ることで、設計段階から運航ニーズやコスト制約をすり合わせやすくする狙いだ。設計データを共有する仕組みが機能すれば、後から加わる国内造船所も参入しやすくなる。
もっとも、標準設計を維持・更新するには継続的な投資が欠かせず、どこまで費用を設計プラットフォーム側で吸収し、どこからを個別案件の造船価格に転嫁するのかという難しい線引きも残る。CO2輸送や燃料アンモニアの需要が想定どおり拡大しなければ、投資回収が長期化するリスクもある。脱炭素インフラを支える船を、日本発の共通設計でどこまで広げられるか。その過程で、誰がどのコストを負担するのかが、国内造船業の再起を左右しそうだ。
参考・出典
- MILESを活用した液化CO2輸送船・新燃料船等の標準設計スキームに関する覚書締結について(三菱造船ほか7社共同リリース)
- MILES を活⽤した液化CO2 輸送船・新燃料船等の標準設計スキームに関する覚書締結について(日本郵船)
- Memorandum of Understanding Concluded on Establishing a Standard Design Framework Utilizing MILES for Liquefied CO2 Carriers and Alternative Fuel Ships(Mitsubishi Heavy Industries)
- Joint Study to Establish Standard Specifications and Designs for LCO2 Carriers in Japan Towards Large-Scale International Marine Transport of Liquefied CO2 by 2028(Mitsui O.S.K. Lines)
- 海運関係7社、次世代造船液化CO2輸送船・新燃料船などの標準設計スキームで覚書締結(LOGI-BIZ online)
