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中国で暮らす日本人の子どもたちを守ろうと、文部科学省が動き出した。台湾有事をめぐる高市早苗総理大臣の発言に中国政府が抗議を強めるなか、松本文科大臣は2025年11月18日の会見で、中国各地の日本人学校などに安全確保の徹底を求める方針を示した。
文科省、日本人学校に安全確保を要請 外交緊張が学校現場にも
松本氏によると、文科省は在中国の日本人学校や補習授業校、日本語教育機関などに対し、在留邦人の児童生徒や日本人留学生の安全を最優先とするよう求める通知を出す準備を進めている。登下校時の見守り体制の強化や、不審者への対応マニュアルの再点検、現地当局との情報共有などを促し、各校が自らの置かれた環境に応じた対策を改めて点検することを期待しているという。
中国本土には11校の日本人学校があり、およそ3300人の子どもたちが通っているとされる。すでに在中国日本大使館は、現地に住む日本人に対して人が多く集まる場所を避けることや、言動に注意することなどを呼びかけている。文科省の通知は、こうした外務省側の動きと歩調を合わせ、子どもたちが日常生活を送る場である学校に、より具体的な行動を促す役割を担うことになりそうだ。
深センの刺殺事件が残した記憶と、高まる不安
松本氏が会見で言及したのは、2024年に中国南部の深センで起きた事件だった。日本人学校に通っていた男子児童が刃物で刺されて死亡し、学校の外で暮らしと隣り合わせにある危険が、保護者や関係者に深い衝撃を与えた。大臣はこの痛ましい出来事を踏まえ、児童や生徒だけでなく家族や教職員の身の安全も視野に入れ、最大限の備えを取る考えを示し、再発を防ぐ決意を強調した。
一方で、中国側は高市総理が台湾情勢をめぐる国会答弁で、日本への武力攻撃に準じる「存立危機事態」になり得るとの趣旨を示したことに反発を強めている。中国外務省や軍関係者の強い言葉に加え、中国教育省が日本留学を慎重に検討するよう自国民に通知するなど、政治的な対立は市民や子どもたちの日常にも影を落とし始めた。外交の緊張が続くなかでも、日本の行政機関が現地の生活に寄り添った安全対策を積み重ねられるかどうかが、今後の信頼を静かに左右していくだろう。
遠く離れた教室で黒板の音が響くたび、その裏側で支える安全網の細やかさが一層問われている。
