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秋の国会の廊下に、静かな足音が重なる。公明党と国民民主党が接近を強めていると伝えられ、与野党の境界がにわかに揺れ始めた。公明は自民党との連立解消を決めたとの報道が広がり、国民民主も自民・日本維新の会との政策協議開始を受けて連立入りを否定したとされる。野党の立場から政策実現を狙うという思惑で、両党の歩幅が合いつつあると映る。
歩み寄りの理由が浮かぶ
現時点で確認されている範囲では、2025年10月16日に国会内で公明の斉藤代表と国民民主の玉木代表が会談し、政治改革や減税、教育などで連携を深める方針を語ったと複数報道が伝えた。与党の屋台骨から離れる公明にとっては存在感の再定義が迫られ、国民民主も維新と自民の接近で立ち位置の再調整が現実味を帯びる。両者の利害が交差し、協調の余地が広がった格好だ。
背景には、政策を通じた「結果の可視化」への渇望がある。長く与党として政策を磨いてきた公明と、中道路線を掲げて実務を重んじる国民民主は、衆参の力学が流動化するなかで、野党であっても合意を重ねれば実を取れるという計算で一致する。自民・維新との関係を断ち切るのではなく、個別法案での協調を探る柔らかい接点を残すあたりに、現実主義の手触りがにじむ。
一方で、与党中枢との距離感をどう取るかは綱渡りだ。政権との全面対決は支持基盤の不安を呼び、逆に擦り寄れば新機軸が霞む。公明は宗教法人改革や政治資金の透明化で旗を掲げてきた経緯があり、国民民主も企業・団体献金の扱いを含む政治改革で存在感を示してきた。両党が重ねてきた「実務型の改革」の延長線上で連携が形になるかが、当面の焦点といえる。
重なる政策の地図をたどる
会談後の説明によれば、両党は公明が掲げた政府系ファンドの創設や科学技術予算の増額に向け、協議体を設けることで一致したとされる。技術立国を再設計する資金循環をどう描くか、大学やスタートアップへの資金供給をどう制度化するかは、少子高齢化下での成長戦略の要だ。財源の手当や投資判断のガバナンス設計まで踏み込めるかが、実効性を分ける分岐点となる。
所得税や教育分野でも接点は多い。とりわけ「年収の壁」をめぐる負担と就業調整の歪みは、家計と労働市場の双方に影響が大きい。国民民主が主張する非課税枠の引き上げや制度の単純化は、公明の家計支援の方向性とも重なる。制度の入り口から出口までの負担と給付の流れを見直し、働き方の選択を阻む段差を均す作業は、両党が共同で走れば加速しうるとみられる。
協議は2025年10月17日にも始動すると伝えられ、初動の設計が鍵を握る。政策テーマを広げすぎれば成果がぼやけ、狭めすぎれば動員が利かない。政治資金の透明化や教育無償化の段差解消といった、比較的合意形成しやすい分野から着手し、合意が難しい税制やマクロ財政には工程表と里程標を置く。そんな現実的な道筋が描けるかに、両党の手腕が映る。
「年収の壁」が映す攻防
年収の壁を巡っては、政府は2025年に税制と社会保険の双方で見直しを進めている。配偶者特別控除の満額適用となる給与水準は2025年度税制改正で160万円へ引き上げられ、扶養基準も103万円から123万円へと改められた。大学生年代の子を念頭に特定親族特別控除も創設され、手取りの逆転を避ける設計が敷かれた。制度の段差を低くする流れは既に動いているといえる。
社会保険では、被用者保険の適用拡大が段階的に進む。月額8.8万円（年収約106万円）を基準とする賃金要件の撤廃は、最低賃金の動向を踏まえつつ2025年6月から3年以内に実施される方針が示され、企業規模要件の縮小・撤廃も段階的に進む見通しだ。働きたいときに働ける環境を整えるという大筋で、税と社会保険の歯車が噛み合い始めている構図がある。
こうした政府方針の上に、両党はどの段差をどの順でならすかで競い合う。年収基準や控除の組み合わせを誰にどれだけ配分するかは、世帯構成と地域の賃金水準で影響が異なる。公明と国民民主が合意を重ねれば、自民や維新にも修正圧力が働くが、可処分所得と財政規律の綱引きは避けられない。与野党の駆け引きのなかで、家計に届く「段差解消」の具体像が問われている。
なお、公明の連立解消決定や16日のトップ会談の詳細は、現時点で党公式サイトなど一次情報での確認が十分ではない。一部報道ベースの情報を含むことを踏まえ、発言の文言や決定事項の最終確認は今後の党発表や国会手続きで精緻化される見通しだ。政策連携の行方は、次の国会審議日程と並走する形で具体像を帯びていくだろう。
