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冷たい風が残るキーウの未明、高層住宅の壁が黒く焦げ、砕けた窓枠が歩道に散っていた。26日、ロシア軍の無人機とミサイルによる空爆で少なくとも3人が死亡し、子ども6人を含む30人前後が負傷した。致死の攻撃は24時間以内で2度目であり、防空の限界と追加支援の遅れが改めて浮かんだ出来事である。
裂けた壁の前で見えたもの
市北東のデスニャンシキー地区では9階建て住宅に火が回り、上層階のベランダから黒煙が押し出されていた。現時点で確認されている範囲では、救助人数に報道の幅があり、非常事態当局は十数人の救出を示す一方、別の報では数人の救助にとどまると伝えられる。いずれも夜間の避難が難しかった実情を映す。
同じ時間帯、遠くない16階建ての高層住宅にも無人機の破片が落下し、室内の一部が損傷した。別の高層棟でも被害が出たが、消防当局によれば大きな延焼は免れたとみられる。ビルが直撃を受けたのか、迎撃に伴う破片が当たったのかは特定に時間を要しており、市長も断定を避けた発言にとどめた。
首都圏の空襲警報はおよそ1時間半続いたのち、26日未明に解除された。負傷者には子どもも含まれ、現場からは救急車が絶え間なく出入りした。市当局によれば全員が医療支援を受け、重症者の一部は入院しているとみられる。街路に散ったガラス片の隙間を縫い、住民が毛布と薬袋を抱えて戻る姿があった。
続く夜の攻撃、試される防空
今回の空爆は、連夜の攻撃の延長線上にある。ウクライナ軍は夜間に飛来した無人機の大半を撃墜したと発表し、迎撃の手は鈍っていないと示した。ゼレンスキー大統領は、直近1週間だけでもロシアが千機規模の無人機や多数の誘導爆弾・各種ミサイルを投入したと指摘し、都市の生活を狙う反復攻撃だと強く批判した構図が浮かぶ。
25日の空爆でも少なくとも4人が死亡しており、死者が出る攻撃はわずかな間隔で重なった。大統領は「この恐怖から都市を守る」ためとして、防空の要である地対空ミサイル「パトリオット」の追加供与を改めて求め、最大25基の確保を目標に支援国との調整を続ける姿勢を示した。冬の到来を前に、補給と整備の両輪が問われている。
市民の暮らしは、爆発のたびに細かく断たれる。停電は徐々に復旧しても、割れた窓は寒風を呼び込み、夜間の移動は警報で遮られる。防空網が機能しても、落下する破片が二次被害を生む現実は変わらない。防衛手段の層を厚くしない限り、「守れたもの」と「守り切れなかったもの」の境界は薄氷のままだと映る。
停戦の言葉と現場の温度差
一方、外交の舞台では温度差が広がっている。米国のトランプ大統領は専用機の機内で、進展が見込めなければプーチン大統領との会談は開かない考えを示した。和平合意を模索する姿勢は繰り返し表明されるが、具体的な日程は流動的で、合意の土台が整うまで待つという含みを残した発言が続く状況にある。
ただ、交渉の時間は現場の被災者にとって別の時間軸で流れている。崩れた外壁の前では、消防隊が瓦礫を片づけ、住民が濡れた毛布を絞る。救助された人々の中には子どももいる。攻撃の手は止まらず、支援は追いつかない。政治の言葉と現場の息づかいの距離が、今夜の空にもなお広がっているとみられる。
