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パリ郊外の軍用空港で、フランス製戦闘機ラファールの機首を背にマクロン仏大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領が握手した。2025年11月17日、両首脳はウクライナに最大100機のラファールなどを供給する意向書に署名し、長期的な防空力強化をうたった。その翌日、モスクワからは強い反発の声が上がった。
フランス、10年越しでラファール最大100機を構想
今回署名されたのは、正式な売買契約ではなく「意向書」と呼ばれる政治的な約束だ。内容は、今後10年ほどの期間でラファール戦闘機を最大100機、あわせて地対空ミサイルSAMP/Tやドローン、誘導爆弾などをウクライナに供給するという枠組みを示したものとされる。具体的な資金手当てや納入スケジュールはまだ明らかになっておらず、欧州の新たな資金制度や凍結ロシア資産の活用が検討課題となっている。
フランスはこれまでもミラージュ2000戦闘機や長射程ミサイルをウクライナに提供してきたが、ラファールは同国空軍の主力機であり、輸出価格が1機あたり数億ユーロ規模とされる高価な装備だ。訓練には数年単位の時間がかかるため、今回の意向書は、短期の戦況を左右する即効薬というより、将来のウクライナ空軍をどう再建するかという長期構想の色彩が強い。フランス側にとっても、自国防衛産業の受注を確保しつつ、欧州の軍備市場で存在感を示す狙いがにじむ。
モスクワは「軍国主義をあおる」と非難
こうした発表に対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は11月18日の会見で、「フランス政府は平和に寄与していない」と述べ、むしろ軍国主義的な感情や好戦的な空気を強めていると批判した。ロシア政府はこれまでも、北大西洋条約機構加盟国がウクライナに戦車やミサイルを供給してきたことを一貫して非難しており、今回のラファール計画もその延長線上にあると位置付けている。フランスが空軍の“看板”ともいえる機体を長期的に供給する構えを見せたことで、モスクワの警戒感はさらに高まった。
ペスコフ氏はまた、「ウクライナ政権にどのような航空機を売却しても前線の力学は変わらない」と述べ、欧米の最新兵器が投入されてもロシア軍の優位は揺らがないとの見方を示した。ロシア側は、これまでも西側の兵器は戦場で決定的な差を生んでいないと主張しており、軍事支援を続けるほど戦争が長引き、犠牲者が増えるだけだという論理で各国をけん制している。一方で、ウクライナとフランスは、ラファールや防空システムの導入が将来の抑止力となり、攻撃を思いとどまらせる効果を期待しているという構図だ。
パリとモスクワの距離は変わらないまま、ウクライナ上空だけがさらに重たい計画の影を背負い始めている。
