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ロイター通信によると、2025年12月4日、ロシア安全保障会議副議長で前大統領のドミトリー・メドベージェフ氏が、欧州連合（EU）が凍結中のロシア資産を奪えば「開戦理由」に相当し得ると警告した。ベルギーで凍結されている資産を「賠償融資」の名目で利用する案を「盗み」と非難し、その結果はブリュッセルや各EU加盟国に及ぶと示唆している。ウクライナ支援の財源をめぐる議論が、欧州の安全保障と市民生活にどのようなリスクをもたらすのかが改めて問われている。
『開戦理由』という言葉が示すメッセージ
メドベージェフ氏はロシアのSNS上で、EUがベルギーで凍結しているロシア資産を「賠償融資」として活用しようとすれば、国際法上特別な意味を持つ「開戦事由」とみなし得ると主張した。EUを「狂気」と呼び、資産の活用を「盗み」と表現する挑発的な言い回しも伴っており、欧州側への圧力と国内向け強硬姿勢の誇示という二つの狙いがにじむ。
一方で、同氏はかつての穏健イメージから一転し、近年は核兵器使用に言及するなど過激な発言を繰り返してきた人物でもある。アナトリア通信などは、今回の警告もその延長線上にあると伝えている。ただ、すでにロシアはウクライナと交戦状態にあり、「開戦理由」を口にする相手がEU全体へと広がったことは、誤算や偶発的な衝突への不安を欧州の市民に抱かせかねない。ロシア側のレトリックであっても、金融制裁や資産凍結が軍事衝突と結び付けて語られる段階に入ったこと自体が、紛争の重さを示している。
凍結資産を巡るEU内の計算とベルギーの懸念
今回の発言の背景には、EUが検討する「賠償融資」構想がある。欧州委員会は、ロシア中銀などの凍結資産を担保に、ウクライナ向けに約900億ユーロ規模の融資を行う案と、国際市場での借り入れを組み合わせる案を加盟国に提示したとロイター通信は報じる。欧州議会の資料でも、「ロシアが最終的に支払うべき賠償の前借り」という位置付けが説明されており、疲弊する各国予算の負担を軽くしつつ、ウクライナ支援を続ける狙いがうかがえる。
しかし、凍結資産の多くはベルギー・ブリュッセルのユーロクリアに集中していると欧州メディアは伝えており、ガーディアン紙やEuronewsは、ベルギー政府が法的リスクと金融センターとしての信用低下を懸念していると報じてきた。実際、ベルギーの閣僚は「没収と受け取られれば、訴訟と巨額の賠償請求に直面しかねない」と警戒を示している。EU全体としては、ロシアに戦費のツケを回したいという思惑がある一方、そのコストと安全保障上のリスクを誰がどこまで負うのかという合意は固まっていない。メドベージェフ氏の強い言葉は、その駆け引きの厳しさと、財政支援の枠組みづくりが欧州の長期的な安全保障秩序にも直結している現実を浮かび上がらせている。
参考・出典
- Russia's Medvedev says EU seizure of frozen assets could be tantamount to justification for war
- Russia warns EU seizure of its assets may become reason for war
- European Commission will move ahead with controversial plans to fund Ukraine with a loan based on Russia's frozen assets
- Brussels pitches €140 billion loan for Ukraine using Russia's frozen assets
- Stepping up funding for Ukraine and using frozen Russian assets
