本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
ロンドンの議事堂で、議員と職員に配られた一通の警告が空気を変えた。英国の情報機関MI5(軍情報部第5部)が、中国のスパイがヘッドハンターを装い、議会や政府の機密に触れられる人材を狙っていると明らかにしたのだ。SNSの求人連絡が、知らないうちに諜報の入り口になりうる現実が、改めて突きつけられている。英中関係をめぐる緊張の高まりとも重なり、懸念は一段と強まっている。
議員や専門家を狙う「偽の採用担当者」
MI5は2025年11月18日、議員と議会職員に向けたスパイ警報を出し、中国当局とつながる人物がビジネス向け交流サイトのLinkedIn(リンクトイン)などで接触していると警告した。表向きは外部のヘッドハンターやコンサルタントとして、経歴照会や転職相談を持ちかけ、長期的な関係構築を図っているという。オンライン採用や人脈づくりの場が、情報収集の土台に変えられている構図だ。
警報によれば、こうした人物の背後には中国の情報機関がいるとされ、実在のヘッドハンターとみられるオンラインプロフィルが少なくとも2件、公表された。狙いの対象は議会関係者だけでなく、政府職員、シンクタンクの研究者、経済アナリストなど、政策に影響し得る幅広い層に広がっているとされる。気付かないうちに、仕事の相談相手が外国政府の代理人である可能性があることになる。
ダン・ジャービス安全保障担当相は下院で、英国の民主的制度が中国の関係者から継続的な標的にされていると述べた。機密情報に近づける人物を育てようとする動きだとして、政治資金の監視強化や政党への安全保障ブリーフィング拡充など、新たな対策を打ち出す考えも示した。議会だけでなく大学も狙われており、独立した研究への干渉やキャンパスでの活動妨害の試みについて、政府と大学関係者が非公開で協議する場を設ける方針だという。
中国側は全面否定、続く疑念
これに対し、在英中国大使館の報道官は英国側の主張を「完全な捏造で、悪意ある中傷だ」と一蹴し、英政府に厳重に抗議したと明らかにした。自作自演の茶番を直ちにやめ、両国関係を損なう誤った道を進むなと強く求めており、スパイ活動への関与を全面的に否定している。英国での別のスパイ疑惑をめぐる訴追についても、中国側はこれまでも一貫して否認してきた。
今回の警告は、英国で中国スパイ事件として注目された2人の男の裁判が、政治的に微妙な判断の末に取り下げられたおよそ2か月後に出された。さらに、ロンドンに計画されている大規模な中国新大使館を巡り、安全保障や地元住民への影響を理由に反対の声も上がるなど、英中関係にはすでに不信の影が差していた。MI5の幹部は、中国関連の活動は日々続く脅威だと繰り返し訴えており、政府は対中投資の受け入れと安全保障の線引きを迫られている。
静かに届く一通のスカウトメールが、いつかの外交問題や安全保障危機へとつながる時代に、誰が情報の入り口を握っているのかが、より重い意味を持ち始めている。