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香港の民主化活動家・羅冠聰氏が、事前にビザが出ていたにもかかわらずシンガポールで入国を拒否された。内務省は「国益に適さない」と説明し、到着時の追加審査を強調した。日本時間2025年9月27日の出来事で、域外で活動する香港の民主派を巡る各国の対応が問われる局面を映す事案である。
何が起きたのか
日本時間2025年9月27日、羅氏は米サンフランシスコからシンガポールに到着した。入国審査で約4時間、空港内にとどめ置かれたのち、入国を拒否されたという。出席予定だったのは非公開・招待制の会合で、詳細は明かされていない。
羅氏は事前に数日の一度限りの入国を想定したビザが承認されていたと述べる。だが現地での説明はなく、理由は示されなかった。翌28日、到着地だった米国行きの最も早い便で送還されたとされる。
シンガポール内務省は、香港当局が国家安全法に基づく逮捕状を出している点に言及しつつ、羅氏の入国および滞在はシンガポールの国益に適さないと述べた。ビザ保有者でも、到着時に追加審査の対象になると説明した。
当局の説明と法的背景
シンガポールの国境管理は裁量が広く、ビザは入国を保証しない。空港での最終判断は当局が担い、治安や外交上の配慮が優先される。今回も、その原則に沿って判断が下された構図である。
両政府の間には逃亡犯の引渡し協定があると報じられているが、国家安全法に関連する罪を対象に含むかは明確でないとされる。協定の適用範囲や運用は、個別事案ごとに慎重に判断される余地が大きい。
香港の国家安全維持法は2020年に施行され、分離や転覆、外国勢力との結託などを広く処罰対象とする。羅氏は海外滞在中に当局から指名手配され、情報提供者への懸賞が提示されるなど、厳しい圧力の只中にある。
なぜ今、波紋が広がるのか
シンガポールは長らく、他国の政治を国内に持ち込まない原則を強調してきた。経済拠点としての安定を重視し、内外の対立が街に流入することを避ける姿勢がある。今回の判断も、その一貫として位置づけられる。
同時に、この事案は国境を越える言論や運動が常態化した現在の現実を照らす。招待制の会合であっても、出席者の属性や想定される発言が外交関係や地域秩序に波及するとの読みが働けば、門前で止める選択が現れる。
結果として、在外の香港民主派にとって移動の選択肢はさらに狭まる。企業や国際会議の主催者も、登壇者の渡航実現性や法的リスクを織り込む必要が高まる。小さな判断が、都市間の自由な往来に長い影を落とし始めている。
