本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
けたたましい警報音がトゥルチャ県の街に鳴り響いたのは、2025年11月25日早朝だった。住民の携帯端末には、国内向けの緊急警報システム「RO-Alert」で避難を促す通知が届き、空には北大西洋条約機構(NATO)という欧米の軍事同盟に属する戦闘機が急上昇していった。国境の向こうから飛来した無人機が、ルーマニアの空の奥深くへ入り込んだと国防省が伝えたのだ。
今回のドローン侵入に対応したのは、ドイツ空軍のユーロファイター2機と、ルーマニア空軍のF16戦闘機2機だった。モシュテアヌ国防相は、機体は撃墜可能な位置まで接近したが、破片が市街地に落ちる危険を考え発砲を見送ったと説明し、ウクライナ攻撃を続けるロシアによる新たな挑発として受け止めていると語った。
NATO戦闘機が追ったドローンの軌跡
国防省の発表によると、25日朝、ウクライナ国境に近いトゥルチャ県方面でレーダーが未確認目標を捉えたのは06時台だった。ルーマニア空域に接近するのを確認すると、黒海沿岸の基地からドイツ空軍のユーロファイターが緊急発進し、ウクライナ側の港町近くからチリア・ヴェケ周辺へ抜けた無人機の動きを追跡した。同県の住民には、国境付近への攻撃に備えた避難警告も送られた。
一度ウクライナ側に戻った後も事態は収まらなかった。07時台には東部ガラツィ県上空で2度目の侵犯が探知され、今度はボルチャ基地のF16が急行した。無人機はその後、さらに内陸のブランチャ県方向へ向かったとされ、3県に出されていた警報は、機影が国境外に離れたと判断された後に解除された。追跡の結果、ルーマニア領内で見つかった破片に爆発物は確認されていない。
相次ぐ領空侵犯と撃墜判断の重さ
ロシアのウクライナ侵攻が本格化した2022年以降、ルーマニア上空には断続的にドローンが迷い込んでいる。国防当局によれば、今回の事案は13件目で、これまでで最も内陸深くまで入り込んだうえ、初めて日中に起きた。主な舞台はこれまでも、ドナウ川沿いのウクライナ側港湾への攻撃が続く国境地帯であり、NATOの東側を守る前線としての緊張が続いてきた。
こうした状況を受け、ルーマニアでは2025年に法律第73号が制定され、無人機などが無許可で領空に入った場合の対処手順を定めた。脅威度に応じて警告、進路変更の要求、妨害などを行い、それでも危険が避けられないと判断されたときに限り撃墜を最終手段とするという内容だ。ただ人口が密集する地域で撃ち落とせば地上被害が出かねないため、モシュテアヌ氏は住民保護を最優先しつつ同盟国と協調して抑止力を示す姿勢を強調した。
トゥルチャやガラツィの住民にとって、早朝のRO-Alertと頭上をかすめる戦闘機の轟音は、遠くの戦争が身近な日常へ入り込んだ証しでもある。静かな朝が戻るたびに、子どもを送り出す玄関先や通勤途中の道すがらで、ふと空を見上げた人々は、その脆さを意識せずにはいられない。
