米新NSSから「北朝鮮の非核化」が消失　対話再開へ布石との見方広がる

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2025.12.08

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トランプ氏2期目の米政権が米国時間12月5日に公表した新たな国家安全保障戦略(NSS)から、「北朝鮮の非核化」という表現が姿を消した。2003年以降の歴代NSSが掲げてきた目標が外れたことで、ワシントンが2026年の米朝対話再開を見据え、交渉の余地を広げようとしているのではないかという観測が韓国や専門家の間で強まっている。

非核化の文言が消えた日、韓国が直面する現実

33ページにわたる今回のNSSには、「北朝鮮」や「朝鮮半島の非核化」といった記述が一切登場しない。2017年のトランプ政権1期目のNSSが68ページの中で北朝鮮に17回触れ、バイデン政権の2022年版でも複数回言及していたことを踏まえると、この変化は鮮明だと韓国メディアは指摘する。一方で、11月の米韓首脳会談の共同ファクトシートや、9月の米韓日外相会談の共同文書には「北朝鮮の完全な非核化」という文言が明記されており、公式目標自体は維持されていると韓国政府は説明している。

それでも、最上位の戦略文書から非核化が外れた事実は、ソウルに重い計算を迫る。韓国の安全保障専門家の中には、「米国が北朝鮮の核保有を既成事実とみなしつつ、中国との競争を優先し始めた象徴だ」と受け止める声がある。他方で、韓国大統領府の国家安保室は「今回のNSSは米国の脅威認識を抽象的に示す形式に変わった結果であり、地域別の課題は国防戦略など下位文書で扱われる」として、過度な読み込みを戒める。だが、北朝鮮の核・ミサイル能力が高度化するなかで、抑止と対話をどう両立させるかという負担は、これまで以上に韓国側にのしかかりつつある。

対中シフトか対北対話か　読み分かれる米国の意図

ロイター通信などは、北朝鮮の非核化目標がNSSから落ちたことについて、「約20年続いた慣行の断絶だ」と報じ、2026年に向けた米朝外交の地ならしとみる向きがあると伝えた。トランプ氏は2018〜19年に金正恩朝鮮労働党総書記と2度の首脳会談を行ったものの、非核化交渉は決裂した経緯がある。韓国の統一問題研究者の中には、「今回の沈黙は、非核化を前提条件としない対話再開の余地を残す『意図的なあいまいさ』だ」と分析する声もあり、2026年に直接会談を再び試みるシナリオが取り沙汰されている。

一方、韓国や欧米の論評には、より冷ややかな見方も根強い。ハンギョレ新聞などは、北朝鮮への言及欠如は「存在しない脅威とみなしたというより、対中競争と台湾有事抑止に焦点を絞った結果」とし、朝鮮半島問題が優先順位を下げた象徴と位置付ける。NSSは台湾防衛と「第一列島線」の防衛強化を明確に掲げ、日本や韓国に防衛費増額と役割拡大を求めており、北朝鮮への圧力や関与の設計は今後の別文書に委ねられた形だ。非核化をめぐる目標と現実のギャップをどう埋めるのか、そして米国の沈黙が対話への布石となるのか、それとも単なる優先順位の低下にとどまるのかは、2026年に向けたワシントンと平壌の一挙手一投足にかかっている。