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高市早苗首相は30日、韓国での多国間日程に合わせ、日韓関係の安定的発展を見据えた首脳外交を進める構えを強めている。現時点で確認されている範囲では、所信表明で近隣外交と安全保障協力の重視を明確にし、北朝鮮対応や拉致問題も主要な議題となる見通しだ。なお今年は国交正常化から60年の節目でもあり、節度ある関係構築が問われている。
会談の狙いと背景
今回の動きの根底には、互いの経済・安全保障環境の変化がある。日本側は、緊密な意思疎通を通じて誤解や摩擦を抑え、未来志向で協力分野を広げることを狙っている。首脳同士の相互往来を重ねる「シャトル外交」の継続は、関係の安定化に直結する実務的な手段とみられる。短期の成果を急ぐより、協力の土台を太くする姿勢が重視されている。
今年は1965年の国交正常化から60年の節目である。経済や文化の交流基盤が広がる一方、地域の安保環境は緊張が続く。節目の年に、歴史問題での対話努力と、経済安保やサプライチェーン、人材交流の円滑化といった共通利益の分野を同時に進めることが、双方にとっての現実解となりつつある。信頼の蓄積が、危機時の誤算回避にも資する。
高市首相は24日の所信表明で、外交・安全保障の再構築と「強い経済」の実現を車の両輪として掲げた。危機管理投資や技術・人材への戦略的投資を通じ、国際的な信頼を高める方針だ。近隣諸国との協力を前提に、地域の安定と繁栄に資する日本外交を展開する姿勢がうかがえる。こうした政策の延長線上に、日韓協力の深化も位置づけられる。
APECを見据えた連携強化と実務課題
地域協力の舞台としてはAPECの枠組みがある。現時点でも韓国内では関連会合が開催され、海事人材ネットワーク「APEC SEN」は9月に釜山で会議を開いた。分野別の実務協力は、首脳・閣僚級の対話を具体化し、両国を含む域内連携を底支えする基盤となっている。多国間の場で成果を積み上げることが、二国間の信頼にも波及していく。
北朝鮮の核・ミサイル開発は依然として重大な脅威である。日韓に加え、米国を含む3カ国の緊密な連携は、抑止力と対処能力を高めるうえで不可欠だ。情報共有や共同訓練の積み重ねに加え、人道上の課題である日本人拉致問題の解決に向けた協力は、信頼醸成の観点からも重要性が増している。危機管理の枠組みを常時稼働させる発想が求められる。
一方で、象徴的な歴史認識をめぐる論点では冷静な意思疎通が欠かせない。政府首脳の発言や行動は波紋を広げやすく、周辺国への配慮を伴う慎重な判断が不可欠だ。実務的な協力の積み上げと緊張緩和のメッセージを両立させることが、安定的な日韓関係を築く近道といえる。持続的な対話の場を確保し、成果を可視化していく姿勢が重要だ。
