本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
ガソリンにかかる「暫定」税率をなくす法律が、11月28日の参院本会議で全会一致により成立した。立憲民主党など野党が夏に提出した減税案をもとに与野党6党が修正し、年末の廃止時期を明記したことで、上乗せ分25.1円/ℓが12月31日でなくなる。通勤や物流を支える燃料の値段がどこまで下がり、家計の負担を誰がどのように支え続けるのかが、新たな焦点になっている。
暮らしとガソリンスタンド、現場で起きる変化
暫定税率が廃止されると、ガソリン税は1ℓあたり53.8円から、本来の28.7円だけになる。通勤や買い物で毎月100ℓ前後を給油する世帯なら、理論上は月数千円規模で支出が軽くなる計算だが、実際の値下がりは補助金や原油価格の動きにも左右される。
政府は急な価格変動による買い控えや給油渋滞を避けるため、11月中旬からガソリン1ℓあたりの補助金を段階的に引き上げ、現在は20円まで厚くしている。FNNの世論調査では「値下がりを実感している」と答えた人は4割に届かず、表示価格と家計感覚とのずれも表れている。
一方で、ガソリンスタンドの地下タンクには、暫定税率込みの価格で仕入れた在庫が残る。税率だけが急に下がると、事業者は高く仕入れたガソリンを安値で売ることになり、1回のタンク入れ替えで数十万円規模の損失が出かねないため、政府は在庫分の税を後から返す「戻し税」などの仕組みを検討している。
与野党が歩み寄った理由と財政の重さ
今回の減税は、立憲民主党など野党が8月に提出した法案が出発点だった。長年続いてきた「暫定」の名のついた増税措置への不満に加え、物価高のなかで自動車が生活必需品となっている地方ほど負担感が強く、与党側も夏以降の調整で6党合意による一本化に踏み切った。
ガソリンの暫定税率だけでも、国と地方を合わせた年間税収はおおむね1兆円規模と見積もられている。軽油引取税に上乗せされている暫定部分も含めれば減収はさらに膨らみ、高速道路や地方道路の維持費、自治体の一般財源をどう補うかが、財政当局にとって大きな課題になっている。
今回の法律では、ガソリンに続き、トラックやバスが使う軽油の暫定税率も2026年4月に廃止されることが盛り込まれた。物流業界や農業現場にとっては中長期的なコスト軽減が期待される一方、燃料税に依存してきた地方財政には、代わりの財源や環境税などをどう設計するかという重い宿題が残される。
減税後のクルマ社会と環境政策をどう描くか
燃料価格の引き下げは、多くのドライバーにとって歓迎すべき朗報である。しかし、走行距離が増えれば温室効果ガスの排出も増える可能性があり、温暖化対策を進める政府にとっては、ガソリン税に代わるどのような価格シグナルで自動車依存を抑えていくのかが新たな論点となる。
欧州では、ガソリン税や炭素税を組み合わせて燃料価格を高く保ち、公共交通や電気自動車への移行を促している国も多い。日本でも暫定税率の廃止後、道路整備や気候対策の費用を一般財源だけに頼るのか、それとも走行距離や車種に応じた新たな課税や料金制度を導入するのか、選択肢の整理が避けられない。
半世紀近く続いた暫定税率の幕引きは、家計の負担を和らげる一方で、その裏側にあった道路や環境対策のコストを誰がどのように負担するのかという問いを静かに浮かび上がらせた。安くなったガソリンを前に、社会全体でその答えを探る時間は長く続きそうだ。
