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三菱造船と日本製鉄が、低圧LCO2輸送船向け貨物タンクの溶接後熱処理(PWHT)を省略できる製造技術を共同開発した。両社は日本製鉄の新鋼材をタンクに採用し、溶接部の健全性を工学的に評価するECA手法を適用。この設計について、日本海事協会(ClassNK)から世界初となる一般設計承認(GDA)を得たことで、CCUS向けLCO2輸送インフラの拡大に向けた新たな選択肢が生まれた。
製造現場のボトルネックをどう崩すか
低温で大量のCO2を運ぶ大型タンクでは、IGCコードと呼ばれる国際規則に基づき、溶接部の品質確保のためPWHTが求められてきた。だが実際には、巨大なタンクを丸ごと収められる炉を備えた工場は限られ、加熱と冷却に長時間を要する。CCUS需要に応じてLCO2運搬船を増やそうとしても、熱処理設備と工程がネックになり、タンク大型化や安定供給の足かせとなっていた。
今回の技術では、日本製鉄が船級協会規格KF460に適合させて開発した高張力鋼を採用し、その材料特性データを基に三菱造船がECAを実施した。溶接部に微小な欠陥が存在することを前提に、応力履歴や使用温度条件を解析し、運航期間中に破壊に至らないことを証明した形だ。この結果を踏まえ、ClassNKが詳細設計レベルでのGDAを付与し、PWHTを行わない製造プロセスでも安全要件を満たすと認めた。
LCO2輸送コストと脱炭素インフラへの意味
PWHTを省略できれば、専用炉の新設や更新に伴う投資負担を抑えられるうえ、タンク1基あたりの処理時間も短縮できる。日本製鉄は、低圧LCO2タンクの安全性を確保しながら経済性と生産性を両立できるため、輸送コストの低減につながると説明する。ClassNKが世界初のGDAを与えたことで、この組み合わせが今後の低圧LCO2タンク設計における有力な標準候補として扱われる余地も広がる。
三菱造船は、長距離輸送を見据えた低圧LCO2船の標準化を進めており、今回の成果はCCUSバリューチェーン構築に向けた要素技術の一つと言える。日本製鉄も自社のカーボンニュートラル構想の下で、高機能鋼材による他産業のCO2削減支援を打ち出してきた。ただし、CO2回収源や貯留サイトの整備、受け入れ港湾インフラ、国際ルール作りなど課題は多く残る。溶接熱処理をめぐるこのブレイクスルーが、実際の船型開発や商用プロジェクトを通じてどこまでコストとリスクの低減に寄与するのか、今後の実証が問われている。
参考・出典
- 三菱造船と日本製鉄が低圧液化CO2タンクの新規鋼材と熱処理(PWHT)省略技術を開発 | 日本製鉄株式会社
- World’s First General Design Approval(GDA) for Developed Steel and Post-Weld Heat Treatment (PWHT) Exemption based on ECA for Low-pressure Liquefied CO2 Tank made of KF460 steel | Nippon Steel Corporation
- World's First General Design Approval (GDA) for Developed Steel and Post-Weld Heat Treatment (PWHT) Exemption based on ECA for Low-pressure Liquefied CO₂ Tank made of KF460 steel | Mitsubishi Heavy Industries
- ClassNK
- 日本製鉄、LCO2タンク向け新鋼材とPWHT省略技術を開発- 世界初のGDA取得
