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ロシア外務省が2025年11月11日、日本の研究者や報道関係者など計30人のロシア入国を無期限で禁止すると発表した。日本の対ロ制裁への対抗措置で、外務省の北村俊博外務報道官や東京大の小泉悠准教授らが含まれる。高市政権下では初の指定で、緊張が緩む気配は見えにくい。
名指しの対象と広がる範囲
今回の名簿には、政府の発信を担う外務省の北村俊博外務報道官が入った。学術分野では、ロシア・安全保障研究で知られる東京大の小泉悠准教授、北海道大の岩下明裕教授、慶応大の廣瀬陽子教授、拓殖大の名越健郎客員教授の名が並ぶ。対象は肩書の重さにかかわらず、無期限の入国禁止とされた。
報道関係では、日本経済新聞を中心に全国紙の論説委員や編集委員、モスクワ特派員経験者らが含まれた。さらに、ウクライナ国営通信社ウクルインフォルムの編集者、平野高志氏もリストに入った。ロシア側は「日本の反ロシア政策への対抗」と位置づけ、個々の理由の詳細は示していないが、情報発信の影響力を意識した人選に映る。
入国禁止は期限を設けない点が特徴だ。実務上は当面の渡航予定に直ちに影響しない人もいるが、国際会議や現地取材、研究交流の企画段階で制約が残る。名簿が更新されるたび、往来の回路が少しずつ狭まる。その積み重ねが、政策決定の現場から市民の情報受発信の現場まで、じわりと響いていく。
背景にある制裁の応酬
措置は、日本がウクライナ侵攻を受けて継続している対ロ制裁への対抗だ。日本政府は今年も対象の追加や輸出規制の強化、原油価格上限の調整などを進めてきた。ロシア側はこれらを「敵対的行為」と位置づけ、制裁のたびに入国禁止などの対抗策を重ねている。今回もその延長線上にあるとみられる。
実際、今年3月にもロシアは日本の要人ら9人を入国禁止とし、対応をエスカレートさせてきた。高市政権の発足後に入った今回の30人指定は、政権交代を経ても日露関係の基調が変わっていないことを示すサインになった。ロシア外務省は日本の方針を「反ロシア」と繰り返し、対話より対抗の構図を強調している。
一方、日本国内では安全保障上の立場から対ロ制裁を維持する判断が続いている。エネルギーや経済の利害を調整しながら、同盟国との足並みも求められる。双方の論理が平行線をたどる中で、個人を対象とする入国禁止は象徴性が強く、相手の世論に向けたメッセージとして運用されている印象がある。
研究と報道に残る影
研究者と記者の名が連なる今回のリストは、相互理解を支える知の回路に直接触れる。現場に入る機会を失うことは、現象を自分の目で確かめる力を弱める。オンライン越しに補える部分はあるが、現地での対話や偶発的な気づきは替えが利かない。交流の断面が減るほど、議論は内向きになりやすい。
とはいえ、渡航が難しいからこそ、公開情報の精度を上げる工夫や、第三国での学術・メディア対話を積み上げる余地もある。政策論争の熱を下げずに、対象者の安全や人権に配慮した情報流通を保つことが重要だ。制裁の応酬が長期化する局面では、持続可能な知的交流の設計が試される。
3月の限定的な指定から今回の拡大に至る流れは、制裁が国家間から個人の領域へ浸透する過程を示した。入国禁止の実効性は状況に左右されるが、名指しの効果は大きい。関係の窓を閉じ切らずに開けておく仕組みを、研究・報道・外交のそれぞれでどう保つか。静かな手当ての積み重ねが要る。
往来の道が狭まるほど、言葉の届き方は慎重になる。小さな対話の芽だけが、静かに残っている。
