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ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は9日、ウクライナ全戦線でロシア軍が前進していると述べ、東部ドネツク州ミルノフラードで包囲したウクライナ部隊の撃破をプーチン大統領から命じられていると明らかにした。ロシア側は町の建物の3割超を制圧し、近くの要衝ポクロウシクも掌握したと主張するが、ウクライナは陥落や包囲を否定し、防衛と反撃が続いていると説明している。
包囲を強調するロシア、前線で続く攻防
ミルノフラードは戦前におよそ4万6千人が暮らしていた炭鉱の町で、ドネツク州西部の交通の結節点ポクロウシクの東側に位置する。前線に近いこの一帯では砲撃や空爆が絶えず、ドローン映像からは住宅地の焼け跡と、瓦礫の間を縫うように移動する少数の歩行者や車両が確認されている。住民や前線部隊は、水や食料の補給にも無人車両を頼らざるを得ない状況だという。
ゲラシモフ氏は司令部で将校らと会合し、「中央方面軍」がミルノフラードでウクライナ軍を包囲したと報告し、プーチン氏から同地での敵戦力の撃破を命じられたと語ったとされる。ロシア側は町の3割超の建物を制圧したとし、ウクライナ東部一帯でロシア軍が着実に前進しているとの印象づけを図っている。ドネツクやルハンスクなどロシアが実効支配する地域は、ウクライナ全土のおよそ5分の1に達するとされ、ドンバス全域の掌握を目標に攻勢が続いている。
しかしウクライナ側は、同地域で部隊が「包囲された」との見方を退ける。ウクライナ軍参謀本部の報道官は、ミルノフラードやポクロウシク周辺で補給路と部隊交代は維持されており、露軍の攻撃を受けながらも防衛線を保っていると強調する。現場部隊も、町周辺での偵察・掃討作戦や限定的な反撃によってロシア軍の浸透を抑えていると説明している。
占領宣言と否定、情報戦の思惑
ロシア国防省や親ロシア系メディアは、ミルノフラードに隣接するポクロウシクをすでに「解放した」と繰り返し主張し、かつてのソ連時代の地名であるクラースノアルメイスクの名を用いて戦果を誇示している。一方、ウクライナ参謀本部は、ポクロウシク北部の鉄道沿線などで防衛線を維持しており、市内の一部地区で露軍部隊の掃討と補給路の確保が続いていると反論する。
こうした占領宣言と否定の応酬は、前線の実態をめぐる情報戦でもある。ロシア側は戦果を誇張することで、自国民や交渉相手に対し「優位に立っている」と印象づけ、ドンバス全域の割譲を迫る材料にしようとしていると指摘される。ウクライナ側は逆に、防衛線が維持されていることを強調し、援助国に継続的な軍事支援の必要性を訴える狙いがある。どちらの発表がより事実に近いかを外部から完全に検証することは難しいが、いずれにせよミルノフラード周辺での攻防が東部防衛と今後の和平交渉の力学を左右し、残された住民の生死にも直結する局面が続いているとの見方が広がっている。
参考・出典
- Russia's top general says army is advancing in Ukraine and targeting Myrnohrad
- Exclusive drone footage shows devastated Ukrainian town almost encircled by Russian forces
- Ukraine denies reports of encirclement in Pokrovsk, Myrnograd
- General Staff denies russian claims of capture of Pokrovsk, Vovchansk and Kupyansk | Ukrainian news
- No Ukrainian units encircled in Pokrovsk or Myrnohrad – Ukraine's General Staff
- Russian forces appear to tighten grip on strategic city of Pokrovsk
