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ロシア国防省が2025年11月5日、ドネツク州ポクロフスクとハルキウ州クピャンスクでウクライナ軍部隊を包囲し、降伏を促したと発表した。両市では市街地での交戦と補給線への攪乱が重なり、前線は緊張を増している。ウクライナ側は包囲を否定し、抵抗と再配置を続ける構えだ。
前線で広がる挟撃の動き
国防省は、両市周辺で挟撃を進めつつ、小規模で機動力の高い部隊とドローンを前後に差し向け、補給を寸断して後方に混乱をもたらしたと説明する。通信や救護のルートが揺さぶられ、隊列は分断されやすい状況にあるとした。
戦況図では、ポクロフスクは完全包囲まで数kmの圏内に迫ったとされ、クピャンスクでも市街に通じる主要道路へ前進が試みられているという。市内外では奪還と浸透が交錯し、どちらの支配とも言い切れない灰色地帯が広がる。
同省は、部隊の状況は急速に悪化しており、兵士が自力で助かる道は自発的な降伏以外にないと主張した。投降を促す呼びかけは繰り返され、前線のスピーカーや通信網を通じて伝えられていると示唆した。
相反する発言、食い違う戦況図
一方でウクライナ側は包囲を否定し、補給路の確保と部隊の入れ替えを続けていると説明する。市街の一角で抗戦を維持しつつ、近隣拠点への増援や負傷兵の後送を並行させ、前線の線を保つ方針を示している。
ゼレンスキー大統領は2025年11月3日、クピャンスクにいるロシア兵は約60人だと述べ、掃討作戦を進めていると語った。ロシア国防省はこの発言を即座に否定し、むしろ包囲が進みつつあると反論している。
独立系の戦況図や現地報道では、市街の一部が激しく争奪される一方、完全な囲い込みは確認されていないとの見立てもある。ただ、南北からの圧力は強く、戦線は時間帯や地点ごとに表情を変えている。
補給と士気、長期戦の圧力
今回目立つのは、無人機と小隊規模の浸透で補給網を断ち切る戦い方だ。道路や鉄路の結節点が狙われ、撤退や増援のタイミングが読みづらくなる。ウクライナ側も後背地への長距離攻撃を強め、相手の燃料網を揺さぶっている。
住民の多くはすでに退避し、残る人々は断続的な砲撃や停電と隣り合わせの暮らしだ。医療と避難支援の負担は積み重なり、前線の小さな変化が日常の判断を左右する。救助隊は通りの安全を確かめながら人影を探す。
もしポクロフスクが失われれば、周辺の要衝への圧力は一段と増す。道がひとつ閉じるたびに、次の配置が塗り替えられる。夜のうちに引かれた線は朝には別の形になり、静かな交差点にだけ、移動の足跡が残る。
