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外務省の会議室では、職員たちがぎっしり書き込まれた日程表を前に、消しゴムと鉛筆で予定を組み替えている。日中韓3か国の首脳会談を来年1月に日本で開くという案は、中国側の拒否で白紙に戻った。複数の外交筋によれば、議長国の日本は早期開催を水面下で探ってきたが、高市早苗首相が台湾有事を「存立危機事態になり得る」と国会で述べたことに中国が強く反発し、首脳会談の時期すら協議できない状態になっているという。
中国の拒否で止まった「日本開催」と広がる波紋
日本政府は議長国として、日中韓首脳会談を日本で開き、地域協力のペースを取り戻すことを目標にしてきた。だが国会日程の都合から年内開催は難しく、中韓両国に対し、2026年1月ごろの実施案を非公式に打診した段階だったとされる。ところが11月7日の衆院予算委員会で、高市首相が台湾有事を日本の「存立危機事態」となり得ると国会で明言すると、日中関係は急速に冷え込み、中国は外交ルートを通じて「首相が適切に対応しない限り首脳会談には応じられない」との厳しい姿勢を伝えたとされる。
中国は発言への対抗措置として、日本への渡航自粛を呼びかけ、日本産水産物の輸入手続きを一時停止した。24日に予定されていた日中韓の文化相会合についても、韓国側に暫定的な延期を通告し、影響は安全保障の議論を超えて、観光や食、文化交流の分野にまで及び始めている。2024年5月にはソウルで約4年半ぶりの日中韓首脳会談が開かれ、「再スタート」がうたわれたばかりだったが、その流れに急ブレーキがかかった形だ。現時点で新たな開催候補日を詰める見通しは立たず、3か国協力の枠組みは再び不確実性に包まれている。
「存立危機事態」発言が示した安全保障観
今回の緊張の起点となった「存立危機事態」は、2015年の安全保障関連法で導入された概念で、日本と密接な関係にある国への武力攻撃により、日本の存立と国民の権利が根底から脅かされる明白な危険がある状況を指す。この認定がなされると、限定的な集団的自衛権の行使が可能になるため、歴代政権はどの事態が該当し得るかの説明を極めて慎重に行ってきた。高市首相は国会で、台湾周辺での武力行使を伴う事態が条件によっては存立危機事態に当たり得るとの見解を示し、従来あいまいにされてきた「台湾有事」と日本防衛とのつながりを、より具体的な形で打ち出した。
この踏み込んだ説明は、国内では抑止力強化として評価する声と、外交上の柔軟性を失うとの懸念を同時に呼んだ。一方、中国側は、日本が台湾情勢を名指しで自国の安全保障法制と結び付けたと受け止め、強い警戒感を示している。日中韓首脳会談は本来、経済や環境など幅広い分野で協力を進める舞台として整えられてきたが、今回はその土台そのものが安全保障をめぐる不信に揺さぶられている。2008年に始まり、感染症流行や歴史問題の波を越えて続いてきた枠組みは、再び政治対立の影を濃くしながら、次の開催日が書き込まれないままのカレンダーを前に立ち止まっている。
