台湾当局が中国系SNSを規制強化　安全確保と日常利用のはざまで

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.12.06

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台湾当局は12月4日、中国発のSNSアプリ「小紅書（Rednote）」への接続を台湾域内で1年間遮断すると発表した。個人情報流出の懸念に加え、2024年以降に同アプリ経由で多くの詐欺が確認されたことが理由だ。日常の情報収集や買い物に使ってきた若者や企業は、利便性と安全のバランスを改めて迫られている。

若者の日常と企業の宣伝、突然の“空白”

小紅書は、コスメや旅行先、留学や就職まで、写真や短い動画で「生活のコツ」を共有するライフスタイル系SNSだ。台湾では利用者が約300万人に達し、特に大学生や若い女性が通販サイトや店舗選びの参考情報として日常的に眺めてきた。

台湾向けに商品を売り込んできた日本企業や地元ブランドも影響を受ける。レビュー投稿やライブ配信を通じた口コミ宣伝は、観光地や化粧品のプロモーションに欠かせない販路になっており、小紅書経由で予約や購入につなげてきた事業者も多い。

一方で、通販を装った詐欺に遭った人も少なくない。台湾当局は、2024年以降に小紅書経由の詐欺が1706件確認され、被害は約2億4800万台湾ドルに達したと説明し、利用者にアプリの削除と他サービスへの移行を促している。便利さを評価しつつも、被害の実態を知って不安を覚える若者もおり、「危険な場」だった現実がようやく可視化されたと言える。

詐欺1700件と「15項目不合格」が示す危機感

今回の遮断には、犯罪件数の多さだけでなく、技術的な評価結果も絡んでいる。台湾の国家安全局などが行った調査では、小紅書を含む中国製アプリ5本が、個人情報の収集や権限の使い方など15のセキュリティ指標の多くで基準を満たさず、小紅書は15項目すべてで不合格とされた。

内政部と刑事局は、小紅書側が台湾法に基づく代表者の設置や、捜査当局への協力体制を整えず、詐欺捜査が行き詰まっていることも問題視した。そのうえで通信事業者に対し、ドメイン名システム（DNS）レベルでのブロックを命じ、一定期間のアクセス遮断に踏み切った。

政府側は「どこの国のアプリかではなく、詐欺や偽情報への対処だ」と説明し、措置は情報セキュリティと公共の安全を守るためだと強調している。小紅書側が台湾の法制度に従い、捜査協力などの体制を整えれば、最長1年とされる遮断の見直しもあり得るとされ、企業の応答次第で今後の関係は変わりうる。

ネットの自由と安全、線引きを誰が決めるのか

とはいえ、アプリ遮断という強い手段には懸念も根強い。最大野党の国民党（KMT）は、レッドノートの停止はインターネット検閲に当たると批判し、与党・民進党政権が国家安全保障を名目に市民の表現の自由を狭めているとの見方を示した。

台湾はこれまで、FacebookやYouTubeが利用できない中国本土とは対照的に、海外サービスへのアクセスがほぼ自由な「開かれたネット社会」を維持してきた。今回の決定は、そうした自己像が揺らぎかねない一線として受け止められ、今後ほかの中国製アプリにも同様の措置が広がるのではないかという不安も出ている。

同様の議論は、米国でのTikTok規制をめぐる攻防など各国でも繰り返されている。台湾でも抖音（Douyin）や微信（WeChat）など複数の中国製アプリが情報セキュリティ上のリスクとして名指しされており、小紅書の遮断は、どこまでリスクを許容し、その代償や監視の負担を誰が負うのかという問いを可視化する象徴的な一歩となった。

若者の日常と企業の宣伝、突然の“空白”

詐欺1700件と「15項目不合格」が示す危機感

ネットの自由と安全、線引きを誰が決めるのか

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