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霞が関に冷たい風が吹き込み、議事堂の赤絨毯に足音が重なる。2025年11月4日午後、衆院本会議で各党の代表質問が始まる。高市早苗首相にとって就任後初の国会論戦であり、物価高対策と補正予算の行方、そして自民・維新が合意に盛り込んだ衆院定数削減の是非が正面から問われる局面だ。
野田佳彦氏が突く「定数削減」と政治資金
最初に登壇する立憲民主党の野田佳彦代表は、与野党の境界線を試す問いを並べるとみられる。現時点で確認されている範囲では、自民党と日本維新の会が連立政権合意に明記した衆院議員定数の削減を正面から取り上げ、比例代表枠だけを削る発想の妥当性をただす構えだ。小選挙区も含めた制度全体の見直しを求める論点が浮かぶ。
定数削減は「約1割」をめどに、比例代表を対象とする案が調整軸と報じられてきた。維新はスピード感を強調し、自民は各党合意の必要性をにじませる。比例を削ると少数政党や地域多様性の代弁に歪みが出るとの懸念は根強い。一方で政治不信の高まりを背景に「身を切る改革」を求める声も大きい。民意の器をどう設計するか、与野党の距離感が試される。
政治資金をめぐっては、企業・団体献金の受け皿を政党本部と都道府県組織に限定すべきだ、という論点が再燃している。資金の流れを単純化し、監視可能性を高めるのが狙いだが、地方組織の活動維持や献金の迂回防止など課題は残る。野田氏は透明性の徹底を掲げ、政策本位の競争へ舵を切るよう求めると映る。
首相が描く物価高対策と補正予算の“着地点”
高市首相は、最優先課題に物価高対策を挙げる。家計と中小の痛点に即した支援をどう束ねるかが焦点で、裏付けとして2025年度補正予算案の編成・審議を進める構えだ。与野党の力が拮抗する国会で、財源の確保と政策の的確さをどう両立させるか。首相は野党にも協力を求める姿勢を示し、修正や付帯決議を見据えた“落としどころ”を探る展開が広がっている。
補助金の延長か、減税や給付の再設計か、効果と持続性のバランスを問う声は強い。足元の物価高に素早く効く対策と、中期の賃上げや成長投資を後押しする施策をどう配合するのか。消費やエネルギー、市場価格の動きに左右される不確実性も小さくない。首相が描く全体像に、与野党の疑問がどこまで解消されるかが審議の鍵になるとみられる。
与野党が歩み寄れる余地は皆無ではない。価格転嫁の遅れや物流の人手不足など、現場の課題は共通している。野党側は執行の検証と透明性の担保を前提に、家計直撃の負担軽減を急ぐべきだと主張する。首相が応酬の中で、効果検証の仕組みや時限措置の出口を明確に語れるか。論戦の熱は、生活の実感に届く設計図を引き出せるかどうかにかかっている。
比例か、小選挙区か――代表制の要をどう守る
定数削減の論点は、選挙制度の哲学に踏み込む。比例代表は少数意見や新興勢力をすくい上げる役割がある。他方、小選挙区は政権選択を明確にし、地域代表の顔が見えやすい利点を持つ。どちらをどれだけ削るかは、民意の反映と政治の安定という二項のバランスをどう取るかの選択だ。現時点で確認されている範囲では、比例の削減が有力視されるが、参院も含めた制度全体の整合性が問われる。
一票の価値の平等、地域間の過疎と都市集中、政策の多様性。制度の一手は、社会の多面性に直結する。単純な「数合わせ」ではなく、移民やエネルギー、福祉や防災といった長期課題を誰がどう議論にのせるのかという視点が欠かせない。比例の比率を下げた場合の代替措置や、多様な声を議会に運ぶ他の仕組みを同時に設計しなければ、政治への距離はむしろ広がるだろう。
与党は「身を切る」姿勢を示しつつ、政権運営の機動性を重視する。野党は代表制の厚みと熟議の回路を守る発想を前に出す。両論の間を埋めるのは、削減の規模と対象、施行時期、検証条項といった具体だ。数年後の再検証を義務づける条項や、過度に声が削がれる層を補う制度の同時導入など、折り合いの工夫も視野に入ると映る。
この先の論戦日程と登壇者の顔ぶれ
代表質問は、衆院が4日と5日、参院が5日と6日にそれぞれ本会議で実施される見通しだ。4日の衆院では野田氏に続き、自民党の小林鷹之政調会長、日本維新の会の藤田文武共同代表らが順次登壇する方向で調整が進む。与野党が示す数字と制度設計、そして物価高対策の優先順位。答弁の一語一句が、会期後半の補正予算審議の地図を塗り替えるかもしれない。
