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テレビカメラの赤いランプが並ぶ記者室に、新しい党総裁の声が響いた。2025年10月4日、自民党本部で就任会見に臨んだ高市早苗総裁は「物価高対策に力を注ぐ」と最初に切り出し、消費税減税についても「選択肢として放棄しない」と踏み込んだ。政権人事では「全員活躍」を掲げ、総裁選を戦った4候補も起用する考えを示した。漂うのは、停滞を嫌うスピード感である。
物価の壁をどう崩すか――減税も視野に、現金に近い支援も検討
高市氏が強調したのは、暮らしを直撃する価格上昇への即応だ。エネルギーや食料の負担を軽くし、賃上げの流れを冷やさない施策を束ねると語ったうえで、消費税減税について「選択肢を放棄しない」と明言した。過去の与党内議論では景気回復の持続性や地方財政への影響が懸念されてきたが、目の前の痛みにどう手を差し伸べるかが問われる局面と映る。
具体策の一つとして、給付付き税額控除を党内で議論すると表明した。家計に現金に近い形で届き、低所得層に手厚い仕組みであることが利点だが、制度設計や対象の線引き、迅速性が鍵になる。現時点で確認されている範囲では、高市氏はスピードを重視しつつ重複給付の防止や自治体現場の負担軽減にも目配りする構えを示したとみられる。誰に有利なのか、偶然か必然か、その設計思想が今後の焦点だ。
財源の裏付けも避けて通れない。税収動向や国債市場の安定をにらみながら、どこまで一時的措置で乗り切るのか、どの施策を恒久化するのか。消費税をめぐっては景気条項の是非や軽減税率の見直し論も横たわる。高市氏の「放棄しない」という言葉は、手段を閉じずに機動的に打つという宣言に近い。市場と家計に同時にメッセージを出す狙いが浮かぶ。
「全員活躍」と人事の哲学――裏金問題との距離感
人事方針では、総裁選を戦った4候補の力も総動員する姿勢を強調した。「全員活躍、全世代総力結集で取り組む」。会見場ではそのフレーズが繰り返された。幹事長に求める像として「各党と話ができ、党全体を見渡せる方」を挙げ、与野党協議や法案運営を担える交渉力と俯瞰力を条件に据えた。党役員人事は5日から始まる週の前半の早い時期に固める考えで、初動の速さがにじむ。
一方で、派閥裏金事件の関係議員の起用について「人事に影響はない。しっかり働いてもらう」と語った。説明責任や党改革の痛みを避けるのではないか、という厳しい視線も想定されるが、高市氏は「仕事で示す」道を選んだ格好だ。現時点で確認されている範囲では、処分・再発防止と人材活用を両立させる難題に正面から向き合う構図が広がっている。
党内融和の優先か、信頼回復の徹底か。誰に重心を置くのかで政権の色は変わる。総裁選で交わされた政策の違いを強みとして束ねられるか、あるいは妥協の産物に終わるのか。人事発表のタイミングが早いほど、内外に示すメッセージは鮮明になる。偶然ではなく必然の選択として、説明の積み重ねが問われている。
連立の地図と対外姿勢――改憲・安保・財政で一致を重視
連立の枠組みについては、憲法改正、外交・安全保障、財政政策などでの立場の一致を重視する考えを示した。数合わせではなく政策合意を基礎に据える方針だ。政治資金をめぐっては「透明性を持たせていくことが大事だ」と述べ、制度の見直しや公開ルールの強化に含みを持たせた。靖国神社参拝については「適切に判断する」と語り、国内外の反応への配慮もうかがわせた。
外交では日米同盟の強化を要諦に据える姿勢を改めて示し、通商面では関税合意の履行に努める考えを表明した。経済安保の環境が厳しさを増すなか、通商と安全保障を横串で扱う一貫性が求められる。現時点で確認されている範囲では、就任直後から同盟運用と経済連携の両輪を回す意欲が伝わる。内政の安定が外交の基盤になるという古典的命題をどう裏づけるかが鍵だ。
会見は、同時に高市政権の「初速」を測る場でもあった。物価、税、政治資金、人事、連立、外交。どれも先送りが利かない論点ばかりだ。まずは党役員人事が最初の関門になる。人選が示す方向性で、減税や給付付き税額控除の議論がどこまで加速するか、また野党やパートナー政党との距離感がどう整うか。静かな夜の党本部に、次の一手を急ぐ空気が漂っていた。
