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自民党総裁に高市早苗氏が就いた2025年10月4日、国会内の何気ない風景が別の意味を帯びた。小野田紀美参院議員が中国製の清掃ロボットに言及した過去の委員会発言がSNSで掘り起こされ、政治の現場に入り込むロボット技術と経済安全保障をどう両立させるか、静かな論争が広がっている。
静かな廊下を進むロボット、スマホを向ける議員たち
国会議員会館の廊下を、低いモーター音とともに四角い機体が滑るように進む。2024年ごろから、館内で自走する清掃ロボットを見かけた議員が動画や写真を投稿する場面が目立ち、来訪者の足も一瞬止まる。光沢の床に映るLEDの明かりと、すれ違う人の表情に驚きと親近感が同居する光景が広がっている。
投稿の多くは「便利」「可愛い」といった第一印象から始まり、働き手不足の解消や清掃品質の安定化への期待をにじませる。与野党の垣根を越えて、最新機器にスマホを向ける素朴な好奇心が伝わる様子もある。長い国会日程の合間に、機械の律動が小さな和みをもたらしていると映る。
一方で、機体のデザインや表示から海外メーカーの製品とみられるものが多い、という指摘もSNS上で散見された。メーカー名の確定は容易ではないが、動画の外観と一致する海外機の型番を挙げる検証投稿もあり、調達の背景や選定基準に関心が集まっているといえる。
小野田氏の問いかけが残した宿題
現時点で確認されている範囲では、2025年4月9日の参院地方創生・デジタル特別委員会で、小野田紀美氏が議員会館の清掃ロボットに触れ、製造国や安全保障上の配慮をただした経緯がある。機器の由来を把握したうえで、情報や位置データの取り扱い、ネットワーク接続の管理をどう確保しているのかを問いかけた趣旨の発言と受け止められている。
この問題提起は、高市氏が総裁選を経て党の舵を握った現在の空気とも響き合う。高市氏は経済安全保障を重視してきた政治家であり、重要インフラや官公庁の調達でサプライチェーンの透明性や運用時のガバナンスを強めるべきだと訴えてきた。小野田氏はその立場を支持してきたひとりで、両者の問題意識が重なる構図が浮かぶ。
高市氏が第29代総裁に選出された2025年10月4日以降、当時の発言があらためて共有され、SNSで議論が再燃した。清掃という日常の領域でも、国会という場所の特殊性ゆえに安全保障のレンズがかかる。便利さを享受しつつ、どこまでのリスクを想定し備えるべきか――問いは今も続いている。
便利さと安心をどう両立させるか
業務用清掃ロボットは、吸引や拭き上げに加え、空間を認識して地図を作る機能を備えるものが多い。人や障害物を回避し、夜間に無人で稼働できる点は施設運営にとって大きな利点だ。一方で、センサーが取得する情報の範囲、保存の要否、更新や遠隔保守の経路など、見えにくい部分が確かに存在する。そこに不安が生じるのは自然だといえる。
調達と運用で鍵になるのは、機能そのものよりも条件の設計である。例えば、オフライン運用やデータの端末内完結を原則とすること、更新サーバーや保守拠点の所在を特定し、通信を限定・暗号化すること、ログの取得と保存期間を明文化すること。導入前の検証、導入後の監査、障害時の切り替え手順まで含めて要件化すれば、製造国の違いによる懸念は管理可能なリスクに近づく。
政治の現場にあるロボットは、単なる道具以上の意味を帯びる。日常を効率化する象徴であると同時に、境界を越えて流れるデータの媒介でもあるからだ。感情としての安心と、技術としての安全をどう重ねるか。製品名や出自だけで一律に線を引くのではなく、要件と運用で担保するという発想を、社会全体で共有できるかが問われているとみられる。
