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参院予算委の質疑が続く中、高市早苗首相がマイクへ身を寄せた。2025年11月13日、国家の重要情報を守るための「スパイ防止法」制定に前向きな姿勢を示し、「外国勢力から日本を守る対応を検討したい」と語った。日朝関係でも、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談を目指すと明言。拉致問題の解決に向け、実現のための経路を探っていると述べた。発言は、政権の安全保障・外交の優先順位を映している。
国会の場で踏み込んだ首相の答弁
高市首相は委員会で、工作や情報窃取が社会の安定と民主主義に与える影響に言及し、対応強化の必要性に踏み込んだ。発言は総裁選からの主張の延長線上にあり、政権の政策課題として据える意思を印象づけた。個別法の改正にとどまらず、横断的な枠組みの検討に含みを持たせた点も目を引いた。
与党間の合意形成も追い風になっている。自民党は日本維新の会との連立合意に、インテリジェンス（国家の情報機能）・スパイ防止に関する法制を速やかに整える方針を盛り込んだ。野党の一部にも賛同の声があり、国会での論点整理が進めば、審議の土台は整いつつあるといえる。
一方で、運用の歯止めや手続の透明性は早くから問われるだろう。機密保護と知る権利、経済活動や学術交流への配慮をどう両立させるか。委員会室のやり取りには、立法の是非だけでなく、制度設計の細部に視線が集まる空気が漂っていた。
スパイ防止法とは、何をどう守るか
ここで言うスパイ防止法は、国家の機密や安全保障上の重要情報を不正に収集・漏えいする行為を処罰対象とする国内法の総称だ。初出では耳慣れないが、狙いは重要情報の保全にあり、対象や適用範囲の線引きが肝になる。近年は経済安保の観点から、技術・データの流出対策を含めた包括設計が議論の俎上に上ってきた。
具体化に向けては、何を「重要情報」と位置づけるのか、誰がどう判断するのかが焦点だ。企業の研究開発や大学の共同研究、報道機関の取材活動が不当に萎縮しないよう、明確な基準と独立した監視の枠組みが求められる。違反行為の類型や罰則の重さ、越境事案への対応など、技術と国際取引の実態に沿った条文設計が避けて通れない。
もう一つの鍵は、国際連携の整え方である。情報共有の手続や相互法的支援の仕組みは、外交・安保の基盤と直結する。他国の制度をそのまま写すのではなく、国内の人権保障や産業構造に合致させた「日本型」の運用をどこまで描けるか。首相の発言は、理念の表明から実務の設計へと議論の重心が移る合図となった。
拉致問題と日朝対話、受け継がれる方針
首相は同日の答弁で、日朝平壌宣言（2002年に署名された両国関係の基本文書）に基づき、拉致・核・ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、国交正常化を目指す姿勢を示した。金正恩氏との首脳会談を視野に、実施のためのルートや方法を探っているとし、「あらゆる手段を尽くす」との決意を重ねた。
外交の基調は前政権の方針を引き継ぐ形だ。対話の糸口をどう具体化するかは、国内世論と関係国の動向をにらむ繊細な工程になる。被害者家族の高齢化が進む現実は重く、実効的な協議再開の段取りを急ぐ必要がある。首相の強調は、国内の政策課題と歩調を合わせて外交通路を開く意思の表れでもある。
安全保障法制の整備と並行して、国際社会との信頼醸成をどう進めるか。強固な抑止と粘り強い対話はしばしば対比されるが、現実の政策は両輪で回る。国会答弁の一言一句は軽くない。制度づくりと交渉の足並みをそろえることが、次の一歩を確かなものにしていく。
委員会室に残った静けさは、法と外交の針路が長い道のりであることを示していた。
