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物価高と格差拡大が続くなか、生活を支える新たな仕組みとして「給付付き税額控除」が動き出した。27日、国会内で与野党4党の政調会長が集まり、低所得から中間層を対象に減税と現金給付を組み合わせる制度設計を急ぐ方針を確認した。一方で、詳細を政府の国民会議に委ねるのか、国会が主導するのかという、制度設計の舞台をめぐる問いが浮かび上がっている。
家計から見た「給付付き税額控除」の意味
給付付き税額控除は、簡単にいえば「税金を軽くしつつ、お金も配る」仕組みだ。給与から差し引かれる所得税などを抑えつつ、一定の所得水準以下の世帯には追加の現金を振り込むことで、物価高で苦しい家計を細かく支えることを狙う。これまでの一律の減税や臨時給付と違い、所得に応じて支援の厚みを変えられるのが特徴で、格差是正の切り札として位置づけられている。
例えば、非正規で働きながら子育てする世帯では、少し残業をして手取りが増えると、従来の給付が打ち切られ、結果的に可処分所得が増えない「働き損」の不安がつきまとう。欧米で導入が進む同種の制度は、就労を続けるほど税額控除や給付がなだらかに縮小する設計とし、貧困から抜け出そうとする人の背中を押してきた。日本版でも、働く意思を損なわずに支える線引きが問われる。
同時に、誰をどこまで支えるかを決めるには、所得や資産をどこまで正確に把握できるかがカギとなる。マイナンバーや自治体の情報と税データを連携させれば、きめ細かな設計は可能になる一方、事務負担や漏れ・遅れが生じれば、肝心の人に届かないおそれもある。生活者にとっては「複雑すぎて分かりにくい制度」にならないことが、安心感の前提条件だ。
政府か国会か、制度設計の「舞台」をめぐる攻防
27日の会合には、自民党のほか、新たに与党入りした勢力や立憲民主党、連立与党の一角の政調会長が出席し、制度設計を加速させることで一致した。昨秋に自民、公明、立憲の3党で始まった協議は、総裁選などで中断しており、今回の4党協議は仕切り直しとなる。与野党が同じテーブルに着き続けるかどうかが、制度の中身とスピードを左右する。
与党側は、税と社会保障の一体改革を議論するため政府が年明けにも設置する国民会議に、議論を一本化したい考えだ。自民の小林鷹之政調会長は会談後の記者会見で、給付付き税額控除は国民生活に直接関わる制度であり、専門家や地方も交えた幅広い合意形成が必要だと強調し、政府の会議体を舞台にした方が筋だとの認識を示した。
これに対し野党側は、税と給付の在り方は本来、国会が時間をかけて詰めるべき立法課題だと主張する。政府主導の会議に移せば議論の過程が見えにくくなり、責任の所在も曖昧になるとの懸念からだ。1年程度で具体案をまとめる工程表を示すべきだとの提案も出ており、こうした問題意識が野党から相次いでいると、テレビ朝日や共同通信などの報道は伝えている。
長期の税・社会保障改革の中で何が問われるか
給付付き税額控除の議論は、一時的な物価高対策を超え、税と社会保障の関係をどう組み替えるかという長期課題と直結している。消費税の逆進性を和らげ、低所得層への支援を厚くする「恒久的な仕組み」として期待する声は、立憲民主党など野党だけでなく、首相経験者を含む与党内にも広がりつつある。制度が実現すれば、バラマキ的な給付を繰り返す現在のやり方を見直す契機にもなり得る。
一方で、所得や資産の把握精度、財源の負担、地方自治体の事務体制など、詰めるべき論点は多い。こうした重い宿題を前に、政府の会議体に任せるのか、国会で各党が責任を背負いながら決めていくのか――。生活に直結する制度であるほど、どの場で誰が設計図を引くのかという手続きそのものが、国民の信頼を左右する時代になっている。
