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サイレンが鳴り続ける暗闇の中で、テルノピリの集合住宅の上階が一瞬にして崩れ落ちた。ロシア軍のミサイルと無人機による大規模攻撃は子どもを含む多くの命を奪い、街に残された人びとは、壊れた窓から吹き込む冷たい風と、いつ終わるとも知れない空襲警報に耐え続けている。
テルノピリを襲った夜間攻撃と失われた命
ウクライナ西部の都市テルノピリでは、2025年11月19日未明の攻撃で、少なくとも25人が死亡し、その中に子ども3人が含まれていると当局は明らかにした。負傷者は約80人に上り、多数が重傷だとされる。9階建ての住宅2棟の上層階は大きくえぐられ、1棟は3階から上がほぼ崩壊したと救助隊は説明し、がれきの下には今も行方不明者が取り残されている可能性が高い。
現場では、消防や警察、ボランティアが交代でがれきをかき分け、生存者の声を探している。爆発で電力と暖房が止まった周辺では、住民が毛布を抱えて路上に立ち尽くし、避難先の学校や地下シェルターへと歩いていく。ゼレンスキー大統領はSNSで、市民を狙った攻撃はロシアへの圧力がまだ不十分である証拠だと述べ、より強い制裁と防空ミサイルの供与を各国に求めた。
各地を狙った同時攻撃とエネルギー危機
テルノピリだけでなく、この夜はウクライナ全土が攻撃にさらされた。ウクライナ当局によれば、ロシア軍は476機の無人機と48発のミサイルを発射し、エネルギー施設と鉄道など輸送インフラを集中的に狙ったという。少なくとも7つの地域で変電所などが被害を受け、リビウやハルキウでは爆発が報告された。気温が下がるなか、多くの地域で計画停電や緊急の送電停止が行われ、日常生活と産業の双方に負担が広がっている。
こうした攻撃で最初に影響を受けるのは、家庭の明かりや暖房である。電力会社は全国的な使用制限を導入し、住民は決められた時間にだけ電気が使える生活に戻りつつある。病院では自家発電機の燃料確保が課題となり、企業は操業時間の短縮を迫られている。ロシア軍が冬の前後にインフラを重点的に狙う構図は過去数年に繰り返されてきたが、今回のような同時多発の攻撃は、ウクライナの防空力と修復能力の双方を試す局面になっている。
国境まで揺らぐ安全保障と国際社会の応答
国境の外でも緊張は高まった。ウクライナ西部と接するポーランドは、南東部のルブリンとジェシュフの空港を一時閉鎖し、自国と同盟国の戦闘機を緊急発進させて領空を監視した。ロシアのミサイルや無人機が軌道を外れて越境する事態を警戒した措置であり、北大西洋条約機構の加盟国が、ウクライナ上空での戦闘を自国の安全保障問題として受け止めている現実を映し出している。
ウクライナ政府は、この攻撃を国連安全保障理事会の場で取り上げる構えを見せ、同盟国に対しても防空システムや制裁強化を重ねて訴えている。各国の支援はすでに長期戦の様相を呈しており、世論の疲れも指摘されるが、電力網や住宅が破壊される映像は、戦争が今も民間の生活のただ中で続いている事実を突き付ける。暗い街路で懐中電灯を掲げる人びとの姿は、この冬もまた、脆いインフラを守ろうとする静かな闘いが続くことを物語っている。
