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ホワイトハウスの前庭でフラッシュが走り、トランプ米大統領とハンガリーのオルバン首相が肩を寄せて握手したのは7日。移民やEU内の対立といった鋭い論点には深入りせず、話題はエネルギーに寄った。トランプ氏が記者団に、ロシア産原油の制裁でハンガリーへの適用除外を検討する考えに触れたと伝えられ、制裁の理念と供給の現実のはざまで揺れる同盟の姿がにじんだ。
ホワイトハウスで交わされた「事情」の共有
会談は2025年11月7日、ワシントンのホワイトハウスで短時間の公開部分ののち非公開に移ったとされる。両氏は盟友関係を強調し、共同記者会見は設けられなかった。やり取りの多くはプール取材や側近の説明が頼りで、トランプ氏は内陸国が抱える調達制約に理解を示し、ハンガリーの事情を踏まえた柔軟な対応の可能性に言及したと報じられている。
オルバン氏は、ロシア産原油への依存が続く自国の構造を率直に語り、例外なき制裁の運用は経済や市民生活に影響が及ぶと主張したという。移民政策やウクライナ支援など隔たりのあるテーマは、冒頭の発言以上には踏み込まれなかったとみられる。政治の立場の違いよりも、足もとの供給網という現実が優先された形だ。
米政権は近月、ロシアの資源収入を狙った制裁の網を広げてきたが、同盟内のエネルギー事情は一様ではない。トランプ氏の“検討”発言は、制裁の骨格を保ちながら運用面の調整余地を示すサインにも映る。適用範囲や具体の設計はまだ明確ではなく、今後の正式な発表や通達を待つ段階だといえる。
エネルギーの地理が決める現実
ハンガリーは海に面していない。タンカーの直接受け入れが難しく、代替調達には周辺国の港湾やパイプラインの空き容量、原油の品質差に対応する設備改修など多くの条件が絡む。投資と時間を要するうえ、市場が逼迫する局面ではコストが跳ね上がる。オルバン氏の説明は、その地理的制約を米側に改めて伝える意図があった。
欧州の一部は対ロ制裁の堅持を最優先とし、即時の脱ロシア化を求めてきた。他方で中欧の一部では、供給安定や価格抑制の観点から猶予や特例を求める声が根強い。今回の会談で強い言葉が交わされなかったのは、価値観の応酬よりも、冬場の需要や価格の跳ね方といった現実の力学が重視されたからだろう。
米側が除外に含みを持たせたとされる背景には、同盟の足並みを乱さずに現実の制約を織り込む必要があるという計算がある。制裁を骨抜きにしない線を探りつつ、供給網の摩擦や価格高騰を和らげる工夫が試される。結論は急がず、財務やエネルギー当局の実務で調整が進むとみられる。
停戦模索の影と、見通せない距離
オルバン氏は以前からウクライナ支援の枠組みに距離を置き、停戦を急ぐべきだと主張してきた。トランプ氏も近月、ロシア側との対話継続に前向きな発言を重ねるが、具体像は揺れている。ブダペストでの米ロ会談構想が取り沙汰されつつ、条件が整わず棚上げになったとの見方もある。会談の空気には、エネルギーと安全保障が結びつく今の難しさが漂った。
終盤、トランプ氏が「ウクライナは勝てるか」と投げかけ、オルバン氏が「奇跡が起こることもある」と応じたと伝わる。戦況、制裁、国内経済の圧力が絡み合い、単純な答えが出ない現実がある。7日の握手は派手な合意を生まずに終わり、廊下に残った足音だけが、次の一手を静かに待っているようだった。
