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ホワイトハウスの執務室でトランプ米大統領が言葉を重ねるたびに、中南米の緊張は少しずつ高まっている。麻薬と不法移民の流入を止めるとして、ベネズエラやメキシコ、コロンビアを念頭に軍事作戦の拡大に言及し、すでにカリブ海には米海軍が増派された。金融市場ではメキシコ通貨が揺れ、ワシントンでは議会の承認を経ない軍事行動への懸念が膨らんでいる。麻薬対策を名目にした力の行使が、地域の秩序をどう変えていくのかが問われている。
トランプ政権、麻薬対策名目で軍事作戦拡大を示唆
国防総省はここ数日、麻薬密輸に関与しているとみなした船舶への攻撃を続けてきた。そうした行動の延長線上で、トランプ氏はカリブ海への海軍増派を指示し、複数の艦船と要員を展開させている。表向きの目的は、米国に流れ込む違法薬物や移民を水際で食い止めることだが、ベネズエラのマドゥロ政権に圧力をかける軍事行動の準備ではないかとの見方も生まれている。
トランプ氏は17日、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団の質問に応じ、「ベネズエラには対処が必要だ」と述べ、同国を名指しで問題視した。一方で、「同地域で軍事作戦を行う可能性を排除するのか」と問われると、明確な回答を避け、選択肢を狭めない姿勢をにじませた。週末には、今後の方針について「ある程度」決めていると語りながら、具体的な中身は明かしていない。
こうした発言と軍の動きが重なり、ワシントンでは警戒感が強まっている。ベネズエラ沖での作戦が拡大すれば、規模によっては実質的な武力紛争と受け止められかねないからだ。大統領には一定の軍事行動を命じる裁量が与えられているが、長期化する戦闘や大規模な作戦には議会の関与が求められる。どこまでが麻薬対策で、どこからが新たな戦争とみなされるのか、その線引きが改めて問われている。
ベネズエラからメキシコへ、発言が広げる波紋
トランプ氏は17日、マドゥロ大統領との直接対話について「おそらく前向きになれる」と述べ、交渉の可能性に含みを持たせた。同時に「ベネズエラを統治している人々は好きではない」とも語り、政権への強い不信を示した。対話と圧力を並行させる姿勢だが、軍事作戦を排除しない発言と組み合わさることで、ベネズエラ側には大きな不安を与えている。
その矛先はやがてメキシコにも向かった。トランプ氏は麻薬問題への対応をめぐり、メキシコ政府に「満足していない」と不満を表明し、米軍による攻撃や派兵を検討するとまで踏み込んだ。長年、安全保障や貿易の分野で協力してきた隣国に対し、軍事力の行使をちらつかせる発言は異例であり、両国関係の基盤を揺るがしかねない。麻薬カルテル対策で積み上げてきた共同作戦が、突如として一方的な軍事行動へ転じるのではないかという懸念が広がっている。
トランプ氏がメキシコへの攻撃の可能性について「私としては構わない」と述べた直後、メキシコ・ペソはこの日の安値まで売られた。市場は、発言が実際の軍事行動に結びつくかどうかを慎重に見極めようとしているが、通貨の動きはリスクを織り込み始めたことを示している。メキシコ外務省は現時点で正式なコメントを出しておらず、沈黙がかえって不透明感を強めている側面もある。
議会承認と同盟関係、広がる不安と政策の行方
トランプ氏は、麻薬の流通を止めるための軍事行動について「そのために軍を使うことを誇りに思う」と述べ、武力行使に前向きな姿勢を隠していない。その一方で、実際に作戦を実施する場合には議会の承認を求める考えも示し、「民主党も共和党もクレイジーでなければ賛成するだろう」と語った。野党である民主党を「少しクレイジーだ」と揶揄する発言もあり、国内政治の対立構図を軍事政策に持ち込んでいる。
議会側では、すでに行われた船舶への攻撃やカリブ海での軍事展開を踏まえ、大統領がどこまで単独で作戦を拡大しうるのかが論点になりつつある。テロ対策や自衛を名目とした過去の軍事行動と同様、今回も事実上の戦争に発展しうるにもかかわらず、明確な宣言や十分な審議を経ないまま既成事実が積み上がるのではないかという不安が背景にある。
トランプ氏はまた、コロンビアのコカイン生産施設を標的とする用意があると語り、陸上拠点への攻撃にも言及した。メキシコやコロンビアはこれまで、米国と協力して麻薬組織と闘ってきた経緯を持つが、米軍による一方的な攻撃が実行されれば、その枠組み自体が揺らぐ可能性がある。麻薬との戦いという名のもとに、軍事力がどこまで前面に出るのか。中南米の海と陸を取り巻く空気は、静かに重さを増している。