本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
台北の法廷に向けて書類を抱えた弁護士たちが歩みを早めるその日、半導体受託生産最大手のTSMCは、かつての中枢メンバーを訴える決断を下した。2025年11月25日、同社は長年研究開発を率いた元シニアバイスプレジデントの羅唯仁（Lo Wei-jen）氏を相手取り、台湾の知的財産・商業裁判所に提訴したのである。新たな勤務先は競合のIntel Corp.。最先端チップを巡る情報が、企業間と国家の神経を逆なでする局面に入っている。
TSMCが元幹部を提訴 インテル転職と機密情報の行方
TSMCによると、訴えの柱は雇用契約と競業避止契約、そして企業秘密を守る各種規制の違反だという。競業避止契約とは、退職後一定期間は競合企業で働かないと約束する取り決めで、先端技術を抱える企業では一般的になりつつある。TSMCは声明で、羅氏が自社の営業秘密や機密情報を利用したり、Intelに漏らしたりする「高い可能性」があり、損害賠償請求を含む法的措置が不可欠になったと強調した。
同社や現地報道によれば、羅氏は2004年にTSMC入りし、2014年にシニアバイスプレジデントへ昇進、2025年7月に退職するまで最先端プロセスの量産化を牽引してきた。2024年には経営戦略部門の担当となった後も、研究開発部門の会議を招集し報告書を求めるなど、開発中の2ナノやA16、A14といった次世代プロセスの情報に触れていたとされる。退職時には法務責任者から守秘義務の説明を受け、「学界に進む」とだけ告げた一方、10月にはIntelのエグゼクティブバイスプレジデントとして合流した。
国家安全法も視野に 揺れる台湾当局と市場
台湾高等検察署は先週、羅氏による技術持ち出し疑惑について、国家安全法と営業秘密法に照らして捜査を開始した。経済部（経済省）は「TSMCの法的措置を尊重しつつ、半導体産業全体への影響を注視する」と表明し、中核技術の流出に当たるかどうかを検察と協力して見極める構えだ。国家安全法では、政府が指定した「国の中核的な重要技術」の海外流出を厳しく禁じており、台湾にとって半導体技術は安全保障と直結する資産になっている。
一連の報道を受け、TSMCの株価は11月25日の取引で前日比4％超下落し、投資家の緊張感を映した。Intel側はコメント要請に応じていないが、Lip-Bu Tan CEOは先週のインタビューで「当社は知的財産権を尊重する」と語り、不正な技術取得を否定している。世界のAI向け半導体の多くを製造するTSMCと、巻き返しを図るIntelの間で、ひとりの技術者の転職が巨大なサプライチェーンと地政学の綱引きに変わりつつある。
機密データの実際の流出が立証されるかはこれからだが、台北の法廷で交わされる議論は、技術者のキャリアの選択と国家レベルの安全保障がどれほど近く結び付いているかを静かに浮かび上がらせている。
