ウクライナ軍がポクロフスクで後退　補給限界で5〜7キロ後方へ再配置

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2025.12.10

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ウクライナ軍は、東部ドネツク州ポクロフスクで一部の市街地を保持する一方、市外の維持困難な陣地から一部部隊を後退させた。オレクサンドル・シルスキー総司令官は12月9日、補給と兵士の交代が限界に達したため5〜7キロ後方へ下げたと説明し、周辺にはロシア軍約15万6000人が集結していると警戒感を示した。どこを守り、どこを捨てるのか――前線では苦しい選択が続いている。

砲撃が続く補給拠点、市街地を守る意味

ポクロフスクは鉄道と幹線道路が交わる補給拠点で、ロシア軍は長期にわたり砲撃と空爆を集中させてきた。開戦前6万人超いた住民の多くは既に避難したが、周辺の炭鉱や住宅地には今も一部の市民が残り、前線が数キロ単位で動くたびに水や電力の供給が途切れる不安定な生活を強いられている。市民が使える避難経路も日々変わる状況だという。

シルスキー氏によれば、ウクライナ軍は11月15日以降の反撃で市の約13平方キロを取り戻し、北部の鉄道線までと西側の約54平方キロを確保している。一方でロシア側はポクロフスク完全制圧を繰り返し主張し、周辺では市街戦よりも砲撃や無人機攻撃が主となる消耗戦が続いていると各国メディアは伝えている。わずかな市街地をめぐる攻防が続くほど、残されたインフラと住民への負荷は重くなっている。

15万超の兵力集中が映す、戦線維持の限界

ウクライナ側の発表や分析によると、ポクロフスク方面にはおおむね10万〜17万規模のロシア兵が投入され、前線全体で最も戦闘回数が多い軸になっている。ロシア軍はここに大量の砲兵と無人機、クラスター弾を集中させ、悪天候を利用して歩兵部隊をじわじわ前進させているとされる。前線の密度が高まるほど、個々の陣地の消耗も速くなる。

今回の撤退命令は、射程外に取り残された小さな拠点を抱え込めば補給路が絶たれ包囲される危険が高まるため、戦線を短く保つ「戦術的後退」と位置づけられている。ただ、守る面積を絞るほど市街への砲撃密度は増し、近郊のミルノフラドなど周辺都市も巻き込んだ一体の戦場が形成されつつある。防衛のために線を引き直すほど、前線と後方の境目はあいまいになっていく。

前線を維持できるかどうかは、砲弾や防空兵器の補給に加え、兵士をどれだけ定期的に休ませられるかにも左右される。司令部は「防衛は続く」と強調するが、現場の負担は増す一方であり、ポクロフスク周辺が今後どこまで持ちこたえられるのかが戦争全体の行方を占う焦点になっている。