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交渉団の乗った機体がジュネーブを離れたのは、24日夜のことだった。数日間にわたる協議を終えたウクライナ代表団は、米国が示した和平案の修正内容を報告するため、キーウへの帰路についた。ロシアとの戦争を終わらせるための道筋を巡り、米国とウクライナはなお意見の隔たりを抱えながらも、その幅を少しずつ詰めつつある。
米案への不信から始まった「練り直し」
今回の焦点となったのは、米政権が提示した28項目の和平案である。領土の割譲や軍の規模縮小、北大西洋条約機構への加盟断念などが含まれ、ウクライナと欧州諸国は「ロシア寄りだ」と強く警戒した。このため23、24日にスイス・ジュネーブで行われた協議では、ウクライナ側が欧州と練り上げた対案を土台に、原案の書き換えが集中的に議論された。
協議後に発表された共同声明では、両国が「更新され改良された和平の枠組み」に合意したと説明したが、具体的な条文や地図は公表されていない。ただ、交渉に関わる関係者によれば、項目数は19前後にまで絞り込まれたという。ゼレンスキー大統領もビデオ演説で「正しい要素が増えた」と述べ、完全な受け入れには慎重な姿勢を保ちつつ、一定の前進を認めている。
一方で、トランプ大統領は自らのSNS「トゥルース・ソーシャル」に、和平交渉で「大きな進展が得られるかもしれない」と書き込み、早期合意への期待をにじませた。ホワイトハウス報道官も、なお幾つかの相違点は残るとしながら「解決できると確信している」と語る。ただし、現時点でゼレンスキー氏とトランプ氏の首脳会談は予定されておらず、最終的な政治決断の場はまだ用意されていない。
欧州の対案とロシアの反発、続く戦場
和平を巡る構図を複雑にしているのが、欧州の動きとロシアの反応だ。欧州側がまとめた対案には、戦闘を現在の前線で停止し、領土問題の最終処理は後回しにする一方で、米国がウクライナに北大西洋条約機構型の安全保障を提供することなどが盛り込まれているとされる。これに対し、ロシア大統領府のウシャコフ補佐官は「建設的ではない」と一蹴し、受け入れられない考えを示した。
ロシアのプーチン大統領は、米国が示した最初の28項目案については「紛争の平和的解決の基盤になり得る」と評価し、ウクライナが拒否すれば軍事侵攻を続けると警告してきた。クレムリンは、ジュネーブ協議後に修正された文書の正式な写しはまだ届いていないと主張しつつ、米国側との交渉には引き続き応じる姿勢も見せている。ロシアにとって、自らに有利な要素をどこまで維持できるかが最大の関心事だ。
その間にも、前線では攻撃が止まらない。23日にはウクライナ東部ハルキウでロシア軍による大規模な無人機攻撃があり、少なくとも4人が死亡した。逆にウクライナ側の無人機がモスクワ方面に飛来し、迎撃の影響で首都圏の空港が一時閉鎖され、郊外では停電も起きた。ゼレンスキー氏はスウェーデン議会向けの演説で、凍結されたロシア資産の活用を含め「ロシアは全面的に代償を払うべきだ」と訴え、妥協はウクライナを弱めるものであってはならないと強調した。砲声と外交文書が並走する現実の中で、和平案の行方はなお流動的である。
