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週明けの取引所で売り板が厚みを増し、港ではクレーンが無言でコンテナを運ぶ。米中の言葉が、モノとカネの流れに影を落としている。中国は12日、トランプ米大統領が来月から中国製品に100％の追加関税を課すと脅したことに反発し、必要なら「対抗措置」を取る可能性を示唆した。緊張は、レアアース規制や半導体輸出管理を巻き込み、通商秩序のゆらぎとして現実味を帯びている。
関税の脅しと応酬の言葉
発端は10日、トランプ氏が中国からの輸入品に対し100％の関税を来月から適用する構想を打ち上げたことだ。現時点で確認されている範囲では、関税の脅しは中国のレアアース規制強化への報復として位置づけられている。12日、中国商務省は文書回答の形で米側の姿勢を強く批判し、必要な時には断固たる措置で自国の正当な権益を守ると訴えた。応酬の構図が鮮明になったと映る。
トランプ氏は12日、「中国のことは心配いらない。すべてうまくいく！」とソーシャルメディアに投げかけ、習近平国家主席への「尊敬」を記しつつも詳細は語らなかった。挑発と宥和が交錯するメッセージは、過去の対中発言と同様に相場と世論に揺さぶりをかける。中国側は、関税の脅しでは建設的な関係は築けないとの立場を繰り返し、米国に「誤った行為」の撤回を求めたとされる。
同時期、中国は米国籍や米国関係の船舶に特別港湾料金を課す一方、中国建造の船などを対象外とする運用も明らかにした。米国が中国関連船に課す新たな費用に対する呼応措置と受け止められる。関税と規制、そして港湾という実務の層で応酬が折り重なり、企業の現場判断を難しくしている構図が浮かぶ。
レアアースと輸出規制、何が変わったか
先週の中国によるレアアース輸出規制の拡大が波紋を広げている。スマートフォンやソーラーパネル、電動車、さらには防衛用途にまで不可欠な素材であり、中国は加工工程で世界の大宗を担ってきた。新たな規制は、素材そのものだけでなく磁石など下流製品や技術移転にも踏み込むとされ、企業の法務・調達・開発の全域に影響線を引く。代替確保には在庫積み増しや供給先の多角化が必要になるが、即効性は限られるとみられる。
米国は半導体関連での輸出規制や対内投資審査を通じ、先端技術の移転管理を強めてきた。中国側は「国家安全保障」の拡大解釈と乱用を批判し、差別的な取扱いだと反発している。今回トランプ政権は、関税の引き上げ方針に加え、特定ソフトウェアに対する新たな輸出管理にも言及したと報じられている。規制の網が素材から装置、ソフトウェア、知見へと広がる構図は、企業にとってコンプライアンスの複合課題を意味する。
足元の市場は、政策の行方に神経質だ。関税が広範囲に及べばコスト転嫁や需要鈍化に直結し、レアアースの目詰まりは生産計画の遅延を招きかねない。一方で、政治の言葉は一転して柔らかくなることもある。実体と期待が綱引きする中、企業はサプライチェーンのボトルネックと規制リスクを可視化し、代替ルートや設計変更のシナリオを同時に走らせる局面に入ったといえる。
APECを見据える駆け引き
米中の言葉が荒ぶる一方で、双方は今月末の韓国でのAPEC首脳会議という「顔合わせ」の場を意識している。会期は2025年10月31日から11月1日で、直前には閣僚級会合と高級実務者会合が並ぶ。トランプ氏と習氏の会談は調整されてきたが、発言の応酬で不透明感も漂う。会えないリスクをちらつかせること自体が交渉カードとなり、関税や規制の振れ幅に影響を与える構図が広がっている。
中国側は、交渉環境を損なう威圧的手法の撤回を米国に求めつつ、必要なら断固対応すると警告した。米側は高関税の構想で圧力を高めながら、最終局面での妥協の余地も残す——そんなメッセージの二面性がにじむ。現時点で確認されている範囲では、関税や規制の実施時期には検討の余地があり、会談の有無や成果文書の文言が当面の市場のカギになるとみられる。
問いは単純だ。衝突のコストと、合意の利益のどちらが大きいか。企業と投資家は、短期の価格変動に目を奪われず、中長期での技術・人材・在庫の最適配分を見直す必要がある。関税は一度上げれば戻すのが難しく、規制は一度広げれば連鎖しがちだ。交渉の舞台となる韓国で、両首脳がどの言葉を選ぶのか。その選択が、サプライチェーンの地図を書き換えるかもしれない。
