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米国防総省は2025年12月23日、中国の軍事・安全保障動向をまとめた年次報告書を公表した。台湾統一を巡り武力行使も選択肢に残す習近平国家主席の下で、中国が2027年末までに「勝ち切れる」水準の軍事能力を整える想定を示しているという。年号が示すのは、危機が明日来るという予言ではなく、備えの締め切りが前倒しされる感覚だ。
「2027」が突きつけるもの
報告書がいう「勝てる能力」は、上陸だけを指す言葉ではない。周辺海空域での威圧や封鎖、ミサイルと情報戦で相手の判断を鈍らせるなど、段階的に主導権を奪う力の総体として読める。期限が明示されると、台湾だけでなく周辺国の企業や自治体も、物流や通信が揺れる局面を現実の業務リスクとして織り込み始める。
一方で、報告書のトーンは「意図の断定」より「能力整備の観測」に軸足がある。防衛研究所は、2027年を侵攻時期と決め打ちする議論の発信源は米国側にあり、中国が自ら「特定年に侵攻する」と明言してきた事実はないと整理する。読者が問うべきは、年号を恐れることより、誤算が生まれる環境をどう減らすかだ。
近代化の加速と、足元で起きる「ブレーキ」の同居
2027年は、中国が建軍100年の節目として掲げる目標年でもある。日本の防衛白書は、中国が2027年までの達成を第一段階とする目標設定を示した経緯を説明し、以後の2035年など複数段階の戦略として位置づけている。米側の報告書が年号を強調するのは、この政治日程と軍の整備計画が重なる点を重視しているからだろう。
ただし、能力整備は直線的に進むとは限らない。Reutersは、人民解放軍の汚職摘発が装備調達を揺らし、短期的な即応性に影響し得るとの見方を伝えた。前年の報告書でも、汚職が近代化目標の達成を妨げる可能性が指摘されている。年号は「期限」だが、その中身は常に変動する。だからこそ各国に求められるのは、単一シナリオではなく、揺れに耐える備えの厚みである。
