ウクライナ和平交渉　米国が前線後退と経済特区案提示　決着見えず

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2025.12.13

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2025年12月11日、米国側から、東部の前線で部隊を後退させたうえで、ウクライナが管理する地域に「自由経済区」に近い枠組みを設ける案が示されていると明かした。交渉は動いているが、住民の暮らしに直結する論点ほど、決着の形が見えにくい。

「特区」提案が突きつける、前線の空白を誰が埋めるのか

今回の提案は、ドネツク州の一部でウクライナ軍が陣地を引き、ロシア軍も前に出ない形で緩衝地帯をつくる発想だとされる。Reutersは、地域を非武装化する一方で、統治の形や安全の担保が明確でない点が残ると伝えている。

経済活動を動かす「特区」は、平時なら投資や雇用の呼び水になりうる。しかし戦時の前線では、治安、通行、税や行政サービスの担い手が曖昧なままでは、商取引どころか避難や物資の流れにも摩擦が出る。線引きの変更は地図より先に生活の手順を変える。

英紙The Guardianは、ゼレンスキー氏が「見えない形での浸透」を警戒していると報じた。軍が下がった空白を誰が管理し、どのルールで違反を裁くのか。経済の看板を掲げるほど、逆に治安の設計図が問われる。

ゼレンスキー氏は同日、和平案をめぐる主要な未解決事項として、領土の扱いとザポリッジャ原発の管理を挙げた。Reutersによれば、米国は戦争終結を急ぎ、年末までに一定の見通しを求めているという。早期決着の空気は、難題ほど「棚上げ」に流れやすい。

ザポリッジャ原発はロシア占領下にあり、核安全上の脆さが続く。国連ジュネーブ事務局の説明では、原子炉は長く停止状態にあるが、外部電源が失われれば冷却に支障が出るため復旧が重要だとIAEAは強調している。管理権は象徴であると同時に、安全確保の実務でもある。

ゼレンスキー氏は、更新した20項目の和平枠組みと、安全保障や復興条件をまとめた別文書を米国へ送ったとも説明した。交渉のゴールが「停戦」なのか「再侵攻を抑える仕組み」まで含むのかで、特区も原発も意味が変わる。結局のところ、線を引く議論は、人と設備を守る手順まで描けるかにかかっている。