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トランプ米政権が12月5日に公表した新たな国家安全保障戦略で、欧州は移民政策や言論統制を理由に「文明の消滅」の危機にあると厳しい言葉で描かれた。一方、ロシア政府は7日、この戦略は自国の世界観と「ほぼ重なる」と評価し、歓迎の姿勢を示した。米ロの安全保障観が近づくとき、欧州、そして戦争下のウクライナの安全保障はどう揺らぐのか。
欧州に突きつけられた「文明の危機」という宣告
今回の戦略文書は、欧州について「現在の流れが続けば、20年も経たないうちに今とは別の大陸になる」と警鐘を鳴らし、少子化や大量移民、言論の抑圧などを挙げて「文明そのものが失われかねない」と論じたと報じられている。NATO同盟国であっても将来は信頼できる安全保障パートナーでなくなる恐れがある、との見方までにじむ。
欧州側から見れば、これは「ロシアの脅威から守る盾」であった米国が、自ら距離を取り始めたサインとも受け取れる。ウクライナ支援の継続を訴える各国首脳の間では、米国のコミットメントが弱まり、ロシアとの取引で停戦が押しつけられるのではないかとの不安もにじむ。国家安全保障戦略は予算や軍配置の方向性を左右する指針だけに、その文言は現場の兵士や市民の将来像にも直結する。
ロシアが歓迎する米戦略、和平と国際秩序への含意
ロシア大統領府の報道官は7日、新戦略がロシアとの戦略的安定の再構築や、ウクライナ戦争の早期停戦交渉を掲げている点などを挙げ、自国の立場と大きく食い違わないと歓迎する姿勢を示した。過去の米戦略がロシアを主要な脅威としてきたのに比べれば、今回は対立を和らげ、むしろ中国への対抗や西半球の防衛を優先する重心移動がにじむ。
トランプ氏は2017年の前回戦略でも「アメリカ・ファースト」を掲げていたが、今回の文書は欧州批判とロシアへの配慮を一段と前面に押し出した形だ。ウクライナにとっては、戦場の現実よりも大国どうしの合意が優先されるのではないかという警戒感が強まる。米ロの安全保障観が接近しても、誰がどのような代償を払って平和を手にするのかという問いは、欧州だけでなく日本を含む同盟国全体に突きつけられている。
