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米トランプ政権がベネズエラ沖で石油タンカーを拿捕し、同国と取引する海運会社や船舶への制裁を強めた。2025年12月10日の拿捕は、輸送側に「次は自分かもしれない」という警戒を生み、出港直前の船が動けなくなる事態も起きている。輸出急減はベネズエラの資金繰りを直撃し得る一方、最大の買い手である中国への目先の影響は限定的との見方が出ている。焦点は、海上の萎縮がどこまで長引き、誰が追加コストを背負うかだ。
「運べない」だけで止まる取引、港の外で膨らむ損失
拿捕の対象となったのは原油タンカーM/T Skipperで、米司法省は2025年11月26日に差し押さえ令状が出ていたと説明した。制裁は銀行取引だけでなく、船を動かす判断そのものを鈍らせる。航路を変えるだけでも燃料費や保険料が上がり、間接影響として販売条件の悪化が起きやすい。
共同通信は、今回の措置が運輸会社の慎重姿勢を招き、ベネズエラ産原油の輸出に影響し得るとの見方を伝えた。原油は売れて初めて外貨になるため、船待ちが続くと直接影響として国家財政の入金が遅れる。生活者にとっても、公共サービスや輸入品の入手に「時間の目詰まり」が波及する恐れが残る。
中国は備蓄でしのげても、買い手の「選択肢」は狭まる
ロイター通信は、中国がベネズエラ産から調達する原油は全体の約4%にとどまり、当面は在庫の厚みなどで衝撃を吸収しやすいと報じた。「ティーポット製油所」は地方の独立系製油所の通称で、割安な重質油に依存しやすい。供給が細る場合、直接影響として安値の調達先という選択肢が減り、採算の揺れが出やすい。
一方で、同通信は拿捕後にUターンするタンカーが出たとも伝えており、物流が萎縮すれば割引販売で穴埋めする余地も小さくなる。「浮体貯蔵」は海上に原油を滞留させる在庫の置き方で、荷受けの遅れを覆い隠す一方、長期化すれば費用が積み上がる。今後の分岐は2つある。制裁の運用が厳格化して迂回が難しくなるか、監視を避ける流通が拡大して取引コストが常態化するかで、負担の出方が変わる。
