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ワシントンの議会に1通の書簡が届いたのは2025年10月7日だった。差出人は米国防総省のファインバーグ副長官で、中国軍を支援しているとみなす企業の扱いについて結論を伝えていた。書簡には、中国IT大手アリババ・グループや検索大手百度、自動車メーカーBYDなど8社を、新たに監視リストへ加えるべきだという判断が記されていた。投資家や企業の間で、静かに波紋が広がり始めている。
なぜアリババなど8社の名が挙がったのか
国防総省が焦点を当てるのは、米国防権限法に基づく「1260Hリスト」と呼ばれる一覧である。ここには中国軍とつながりがあるとみなされた企業が並び、2025年1月の更新時点では通信や半導体、AIなど幅広い分野から134社が掲載されていた。軍事と民生の境界があいまいになりつつある中国の産業構造を踏まえ、米政府は民間企業であっても安全保障上の懸念の対象に含めている。
こうした背景のもと、ファインバーグ副長官は10月7日付の書簡で、アリババ・グループ、百度、BYDの3社に加え、成都新易盛通信技術、華虹半導体、RoboSense、WuXi AppTec、Zhongji Innolightの計8社を「中国軍関連企業」と認定し、1260Hリストに追加すべきだと議会に通知した。ただし、公表されている最新版リストにこれらの企業がすでに掲載されたかどうかは明らかになっておらず、今後の更新内容を見極める必要がある。
企業と投資家にとっての現実的なリスク
1260Hリストに名前が載ったとしても、ただちに米企業との取引が禁止されるわけではない。それでも、米政府が「軍との結び付きあり」と公式に判断した企業として記録されることで、銀行や機関投資家、調達担当者は慎重にならざるを得ない。米市場の参加者にとっては、株式や社債を保有し続けることが、将来の制裁強化リスクに直結しかねないという強いシグナルとなる。
さらに、国防関連の入札やサプライチェーン規制、バイオテクノロジー分野の法案などで、1260Hリスト掲載企業を追加的な制約対象とみなす動きも進んでいる。防衛関連の契約企業には、取引先や部材の由来までさかのぼってリスト該当企業との関係を点検することが求められつつある。米国で事業を行う日本企業や金融機関も、クラウドサービス、半導体、物流などの見えにくい部分まで含めて、どこまでリスクを許容するかという難しい判断を迫られる。
1260Hリストとは何か
1260Hという名称は、2021会計年度米国防権限法の条文番号に由来する。この条文は、米国防総省に対し「米国内で事業を行う中国軍関連企業の一覧」を少なくとも2030年まで毎年公表するよう義務付けている。リストには通信、造船、半導体、エネルギーなど多様な分野の企業が含まれ、2022年や2024年、2025年の更新では海運や先端技術関連の企業が追加されるなど、対象は徐々に広がってきた。
このリストは、資産凍結など直接の制裁を科す「SDNリスト」などとは異なり、法的拘束力よりも警告としての性格が強い。それでも、掲載された企業は米政府調達の候補から外されやすくなり、国際的な評判にも影を落とす。アリババは「軍事企業とみなされる根拠はない」と反論し、中国外務省も米国が安全保障を口実に中国企業を不当に抑圧していると批判している。1枚のリストをめぐる判断の積み重ねが、経済と安全保障の境界線を静かに描き替えている。
