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2025年12月5日、中国の習近平国家主席がフランスのマクロン大統領とともに中国南西部の四川省成都を訪れた。国家主席自らが地方都市まで外国首脳を案内するのは珍しく、中国が欧州連合（EU）の中でフランスを特別なパートナーとみなしていることを印象づける演出となった。来年フランスが主要7カ国（G7）首脳会議を主催することも踏まえ、象徴的な場面づくりに力を入れたかたちだ。
地方都市で演出された「親密さ」が映すもの
成都での両首脳の行程は、形式的な会談とは異なる「親しさ」を前面に出す内容だった。新華社通信や中国紙の英字版によれば、両首脳は成都近郊の都江堰の灌漑施設を視察し、人と自然の調和を象徴する場所として紹介を受けたという。TV朝日系列の報道では、この日は市内のパンダ保護基地を一緒に訪れる予定も伝えられており、中国側が文化や環境保護をキーワードにした「ソフトな外交」を重ねていることがうかがえる。
アルジャジーラによると、マクロン氏は同日朝、成都の公園で市民と一緒にジョギングする姿も撮影されている。若い学生との対話の場も設けられる予定で、フランス側も中国社会の「今」を直接感じ取りたい思惑がある。こうした地方都市での交流は、企業幹部や外交当局者だけでなく、現地の住民や将来を担う世代に向けて、中仏関係の近さを印象づける効果を狙ったものとみられる。一方で、友好ムードが強調されるほど、両国の利害が本当に一致しているのかという疑問も浮かぶ。
EUとの緊張の中で、フランスに託される役割
ロイター通信は今回の訪中について、首脳同士の演出とは裏腹に、通商面で目立った成果は乏しかったと伝えている。航空機やエネルギーなど12件の協力文書は結ばれたものの、大型の商談は見送られたとされる。背景には、中国製電気自動車への追加関税や、フランス産ブランデーに対する対抗措置など、EUと中国の間で続く貿易摩擦がある。中国側はフランスとの関係をてこにEU全体の対中姿勢を和らげたい思惑があり、フランスは逆に、中国市場へのアクセスを守りつつ欧州産業の防衛線も維持しなければならないという難しい役回りを負っている。
中国国際放送局の日本語版は、北京での首脳会談で、両国が航空宇宙や原子力、グリーン経済など幅広い協力を確認したと伝えた。同時に、ウクライナ情勢や国際秩序をめぐる立場の違いは残されたままだ。成都への同行という厚遇は、フランスに「独自路線をとれば対話のチャンネルを広げられる」と示すシグナルでもあるが、EU全体の対中戦略を左右するほどの決め手になるかは不透明だ。象徴的な風景の裏側で、欧州と中国のあいだでどこまで歩み寄るのかという重い選択が、これからもフランスに突きつけられ続ける。
