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沖縄県与那国島への新たなミサイル部隊配備をめぐり、中国に続いてロシアも強く反発している。日本最西端の小さな島は、台湾や東シナ海をにらむ防衛の要として注目が集まる一方、周辺国の不信も高まる。島の暮らしと地域の安全保障のあいだで、何が揺れているのかを見ていく。
島の暮らしと防衛強化――与那国から見える不安
与那国島は人口約1800人の日本最西端の島で、台湾までおよそ110キロしか離れていない。防衛省は南西地域の防衛力強化の一環として、陸上自衛隊与那国駐屯地に地対空ミサイル部隊を新設する計画を公表してきた。中国軍機やミサイルへの備えを強める狙いだと説明している。
2023年には島で初めて住民説明会が開かれ、防衛省の担当者が「島を守るための装備であり、敵基地攻撃には当たらない」と強調したと朝日新聞は伝えている。一方で住民からは、長距離のミサイルが将来配備されれば真っ先に標的になるのではないかという不安の声も相次いだ。
24日には中国軍とみられる無人機が与那国島と台湾の間を飛行し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進して対応したとテレビ朝日は報じた。 漁業や観光に携わる人びとが、自衛隊機の音に日常の変化を感じる場面も増えている。防衛力の強化は島を守る手段であると同時に、ここが紛争の最前線になりかねないという事実を突きつけている。
ロシア・中国が語る「攻撃拠点化」懸念の背景
そうした中、ロシア外務省のザハロワ報道官は27日、与那国島への新たなミサイル部隊配備について批判の声明を出した。KSB瀬戸内海放送などによれば、彼女は日本が米国の指示のもとで南西諸島を軍事拠点化し、防衛だけでなく攻撃にも転用可能な兵器を蓄えているとの見方を示し、「厳正に対抗する権利を有する」と強い表現でけん制した。
この配備計画には、すでに中国も強く反発している。ロイター通信は、中国外務省の報道官が与那国島へのミサイル配備を「地域の緊張を意図的に高め、軍事的対立をあおる行為だ」と非難し、日本の台湾情勢への関与をけん制したと伝えた。中国は日本産水産物の輸入規制や日本への渡航自粛の呼びかけなども行い、安全保障問題が経済や人の往来にも波及している構図が浮かぶ。
一方、日本側は防衛目的だと強調する。小泉防衛大臣はテレビ朝日の取材に対し、与那国の部隊は日本に侵攻する航空機やミサイルに対応する防空任務を担うものであり「他国を攻撃するものではない」と述べた。 奄美大島や宮古島、石垣島にも類似の部隊が置かれており、南西諸島をミサイルでつなぐ防衛線の姿が、近隣国との認識ギャップを左右している。
抑止と不信のはざまで――残された選択肢
日本政府が南西諸島へのミサイル配備を進める背景には、中国による台湾周辺での軍事活動の活発化がある。朝日新聞によれば、防衛省は与那国島の部隊を含む一連の配備を、相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止力」として位置づけている。地対空ミサイルは自国の上空に迫る航空戦力を排除するための装備であり、法的にも専守防衛の枠内にあると説明されている。
しかし、ロシアや中国から見れば、ミサイルの射程や配備場所だけを切り取って「攻撃的」と評価しやすい構図がある。両国は近年、日本周辺で共同の艦艇・航空機パトロールを行っており、今回のような言葉の応酬が軍事行動のエスカレーションにつながる懸念もある。抑止のつもりの配備が、相手には包囲や挑発として映るという認識ギャップは小さくない。
与那国島の住民にとって切実なのは、こうした安全保障上の議論が、自分たちの暮らしや地域経済とどう両立しうるのかという点だ。政府は住民説明会や近隣国への説明を通じて装備の性格や運用ルールを丁寧に示す必要がある。島を守るための措置が、周辺国との不信と住民の不安をどこまで抑えられるのか、その試行錯誤はこれからも続きそうだ。
