ゼレンスキー氏がパリでマクロン氏と会談　米主導の和平案巡り協議

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2025.12.02

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ウクライナのゼレンスキー大統領は12月1日、パリのエリゼ宮でフランスのマクロン大統領と会談し、米国主導の和平案を巡る情勢を協議した。両首脳はその後、EU首脳や英独伊ポーランドなどとの電話協議を重ね、ウクライナ支援の継続を確認している。だが戦闘が激しさを増す中で進む和平協議は、「誰がどこまで犠牲を払うのか」という新たな不安も浮かび上がらせている。

和平交渉が進むほど募る、ウクライナ側の不安

パリでの会談では、米トランプ政権がまとめた和平案の修正版が主な議題となった。AP通信などによれば、ゼレンスキー氏は「戦争はできるだけ早く終わらせるべきだ」としつつも、ロシアに占領された地域の扱いが交渉で最も難しい点だと強調している。和平の見返りとして事実上の領土割譲を迫られれば、自国民の犠牲を踏みにじることになりかねないからだ。

一方で、前線ではロシア軍が東部でこの1年で最大規模の前進を遂げたと各紙は伝える。ゼレンスキー政権の内側でも、汚職疑惑を受け側近が辞任するなど政治的な動揺が生じている。砲撃や停電にさらされる住民から見れば、和平協議は歓迎すべき希望であると同時に、「自分たちの声がどこまで届いているのか」という新たな不安の源でもある。

ゼレンスキー氏は会談後のメッセージで、「和平は一時しのぎではなく、持続可能でなければならない」と訴えた。 EUのカラス外交安全保障上級代表も、「被害者であるウクライナに一方的譲歩を強いる停戦は、次の戦争の火種になる」と警告している。こうした発言の背景には、停戦合意が繰り返し破られた過去の経験があり、数字で測れない「安心して眠れる日常」をどう取り戻すかという、生活者の感覚がにじむ。

米国主導案と欧州の警戒、過去の和平からの学び

今回のパリ会談の直前、米国特使はフロリダでウクライナ側と約5時間にわたり協議し、その足でモスクワに向かう段取りを進めている。欧米メディア（AP通信やナショナル紙など）によれば、初期の米案にはロシア支配地域の追認やウクライナ軍の能力制限、NATO加盟の棚上げといった条件が含まれていたとされ、欧州各国には「当事者抜きで地図が描き替えられるのではないか」という警戒感がある。

こうした中でマクロン氏は、「領土問題を含む和平案は、ゼレンスキー大統領と話し合わなければ決められない」と繰り返したうえで、「完成した計画はまだ存在しない」と明言した。さらに、凍結されたロシア資産の扱いやウクライナへの安全保障の仕組み、EU加盟の行方などは、欧州がテーブルにつかなければ最終合意できないとも指摘している。欧州にとってウクライナの将来は、地理的な隣国の問題にとどまらず、自らの安全保障秩序をどう描き直すかという長期の構造問題だからだ。

背景には、2014年以降のミンスク合意など、停戦文書があっても実効性を欠けば戦闘が再燃してきた経験がある。今回、マクロン氏やドイツのメルツ首相は「ウクライナや欧州抜きの和平は受け入れられない」とそろって強調し、「公正で持続的な和平」という言葉を繰り返している。単に戦闘を止めるだけでなく、再侵攻を抑止する仕組みや、戦後の再建を誰がどう支えるのかまで見据えた合意でなければならないという、欧州側の学習効果ともいえる。

誰がどこまで負担するか、これからの分岐点

欧州はすでに巨額の軍事・財政支援でウクライナ最大の支援国となり、19回目の対ロ制裁パッケージも成立させた。さらに、凍結したロシアの資産を担保に復興資金を調達する「リペレーションローン（賠償ローン）」構想も進むが、ベルギーなどは法的リスクを理由に慎重姿勢を崩していない。ロシアへの圧力を維持しつつ、自国経済への負担も抑えたい各国にとって、どこまでコストを引き受けるかは国内政治と直結する選択になりつつある。

マクロン氏は、安全保障面では多国籍の「保証部隊」や長期的な防空支援など、ウクライナが再び奇襲されないための仕組みづくりが必要だと訴える。対照的に、米国案の一部には、早期の停戦と引き換えにロシア制裁を段階的に緩和する発想もにじむと報じられており、どのタイミングで負担を緩めるかを巡っても、欧米の温度差は小さくない。

今回のパリでの一連の協議は、欧州が「支援国」としての連帯を超え、和平案そのものの設計にどこまで関与できるかを占う試金石となる。ウクライナの主権と住民の安全をどこまで守れる条件を引き出せるのか、あるいは短期的な停戦を優先して痛みを先送りするのか――負担の配分をめぐるこの静かな綱引きこそが、今後の交渉の本当の焦点になりそうだ。