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ロシアの同盟国ベラルーシと、欧州連合加盟国のリトアニアのあいだで、国境付近の空が再び火種になっている。12月1日、ベラルーシはリトアニアの無人機が自国領空を偵察し過激派ビラを散布したと抗議し、リトアニア側は事実無根だと退けた。一方で、リトアニアの首都圏空港は気球の飛来が相次ぎ、週末に長時間の運航停止を強いられたばかりだ。国境を越える小さな機体の応酬が、「戦争ではない圧力」として人々の生活をじわじわと侵食している。
空港閉鎖が日常になる街で
リトアニアのビリニュス空港では、この秋以降、気球や小型無人機の探知を理由とした一時閉鎖が何度も繰り返されている。ロイター通信によれば、10月初めから少なくとも10回、発着が止まり、そのたびに乗客は行列の中で振り替え便や宿泊先を探す羽目になった。日常的に国境緊張を報じるテレビの映像が、そのまま出張や帰省の計画を狂わせる現実に変わりつつある。
リトアニア当局は、こうした気球の多くがベラルーシ側から飛来し、違法たばこを運ぶ密輸ルートに使われていると説明している。欧州委員会のトップも、密輸気球による領空侵犯を「ハイブリッド攻撃」と呼び、制裁強化を検討する考えを示した。空港運営会社は損害賠償を求める法的措置の準備を進めており、密輸対策と安全保障、そして航空ビジネスの維持が一つの問題となってのしかかっている。
11月末の週末には、ビリニュス空港の上空に多数の物体が接近したとされ、11時間にわたって空域が制限された。各国メディアの集計では、50便前後が欠航や迂回となり、約7000人以上の乗客に影響が出たという。数字だけ見れば統計の一行に過ぎないが、その背後には、乗り継ぎを逃した旅行者や、翌朝の会議に間に合わなくなったビジネスパーソンの苛立ちが積み重なっている。
都市の上空を漂うのは、戦闘機でもミサイルでもなく、風に流される気球や市販のドローンだ。それでも一度「安全が確認できない」と判断されれば、滑走路は静まり返る。軍事衝突の一線は越えていなくとも、緊張が市民の時間と移動の自由を削っていく構図が、バルト小国の玄関口で可視化されている。
ドローンとビラ、互いをなじる隣国同士
こうした中で12月1日、ベラルーシ内務当局は、西部のグロドノ市内で発見された無人機がリトアニアから飛来したと発表した。機体には撮影用カメラが搭載され、上空から情報収集できる構造だったとされる。さらに、民主化を訴えるビラが積まれていたと主張し、当局はこれを「過激派の宣伝」と位置づけた。ベラルーシ外務省は同国駐在のリトアニア代理公使を呼び出し、正式な抗議文書を手交している。
一方のリトアニア政府は、こうした非難を全面的に否定し、無人機の出所は不明だとの立場だ。そのうえで、自国の領空に入り込む気球やドローンこそが問題だとし、10月には国境検問所の閉鎖という強い措置にも踏み切った。欧州の一部報道では、リトアニア側がこれらの動きを「隣国政権による組織的な圧力」とみなし、軍民のレーダー監視を強化していると伝えている。
両国は長い国境線を挟み、互いの行為を「挑発」「情報戦」と呼び合う状態にある。ベラルーシはロシアと安全保障面で深く結びつき、リトアニアは北大西洋条約機構と欧州連合の一員として対応を協議する。大国同士の対立構図が背後にあるだけに、小さな無人機の動きも、単なる越境犯罪なのか、国家ぐるみの作戦なのかをめぐって政治的な意味づけが過熱しやすい。
実際には、気球の多くは安価な気象用のものとみられ、積み荷もたばこや日用品だと当局は説明する。しかし一度、安全保障上の「ハイブリッド攻撃」というラベルが貼られると、関係するすべての越境移動が疑いの目で見られる。国境地帯の住民や民間パイロットにとっては、自分がどの程度まで「安全保障の最前線」に位置づけられているのか、境目が分かりにくくなっている。
「戦争でない圧力」と市民の安全のあいだ
ブリュッセルの当局は、ベラルーシ政府に対する追加制裁を検討し始めた。欧州委員会のトップは、密輸気球の増加を受けて「受け入れがたい攻撃形態だ」と述べ、リトアニアの大統領と連携して対応を協議したと明らかにしている。制裁は国境を越える経済取引を締めつける一方で、ベラルーシ国内の一般市民にも影響を及ぼし得るため、どこまで強めるかは欧州側にとっても難しい判断だ。
技術の面から見れば、今回の事態は「誰でも簡単に飛ばせる機体」が新たなリスクを生んでいることを示している。小型ドローンや気球は、趣味や農業、インフラ点検など平時の用途が広がる一方で、悪用されれば空港機能を麻痺させる手段にもなる。各国は登録制度や飛行禁止区域の拡大で対応しているが、過度な規制は産業利用や市民の活動を萎縮させかねず、線引きは容易ではない。
今回のベラルーシとリトアニアの応酬は、武力衝突を避けつつ相手に圧力をかける「戦争でない手段」が、どこまで周辺国と市民生活を巻き込むのかを映し出している。空港閉鎖による損失を最終的に負担するのは、航空会社や旅行者、観光業者など民間の主体だ。政治的メッセージが優先されるほど、費用負担の議論は後回しにされがちである。
小さな無人機と気球をめぐる攻防は、軍事と治安、そして日常のあいだの境界をあいまいにしている。緊張の高まりに応じて警戒は必要だが、「常時非常事態」のような感覚が定着すれば、市民の自由や往来の余地はじりじりと削られていく。どこまでを安全保障上の脅威とみなし、どこからを通常の犯罪や事故として扱うのかという線引きこそ、今後の議論の核心となりそうだ。
参考・出典
- Belarus accuses Lithuania of using drone to spy and drop 'extremist material'
- Lithuania capital airport closes again over balloons
- Balloon incursions are 'hybrid attack' on Lithuania's airspace, EU says
- Airport in Lithuania closed after unknown drone spotted
- Lithuania indefinitely closes border with Belarus after new balloon incursions
