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ソウルの会場では各国旗が整えられ、警備の動線が確認されている。カナダのカーニー首相が、来週のＡＰＥＣ首脳会議に合わせて中国の習近平国家主席との会談を模索していると、政府高官が2025年10月23日に明らかにした。長く冷えた関係の再接続を試みる一歩であり、通商摩擦の火消しに道が開くかが焦点となる。
会談を探るカーニー政権の計算
高官はブリーフィングで、会談の実現に向け日程調整を進める考えを示し、「可能ならＡＰＥＣで」と語ったとされる。カーニー氏は就任後、幅広い対中関係の再開を主張してきた。先週には「１カ月以内に中国高官と会う見通しだ」との姿勢をにじませ、まず対話の場を取り戻す構えがうかがえる。
もっとも、会談自体は未定であり、議題や成果文書も見えていない。開催地の韓国では各国の首脳日程が錯綜し、実務当局の詰めが最後の壁となる。短時間の顔合わせにとどまるのか、貿易や安全保障まで踏み込むのか。現時点で確認されている範囲では、調整の余地はなお大きいと映る。
通商の火種：ＥＶとキャノーラ
関係改善の陰で、通商の火種はくすぶる。カナダは2024年8月、中国製の電気自動車に加え、鉄鋼やアルミニウム製品にも輸入関税を発動した。これに対し中国は2025年8月、カナダ産の油菜籽（キャノーラ）に対する反ダンピング調査で初裁を公表し、2025年8月14日から保証金方式の暫定課税に踏み切った。
中国商務部は同初裁で、すべてのカナダ企業に対し75.8％の保証金比率を適用すると示した。生産者にとっては痛手であり、農業地帯では先行きへの懸念が広がっている。カナダ政府は2025年10月17日に双方の高官協議を行ったが、直ちに進展を示す材料は乏しく、対立の解消には時間がかかるとみられる。
再接続のシグナルとリスク
それでも対話を重ねる理由は明快だ。エネルギー、鉱物、学術交流、観光など、失われた往来を再起動できれば双方の利益は大きい。米中を軸に再編が進むサプライチェーンの中で、カナダがどこに立つのか。ＡＰＥＣの舞台で首脳が握手を交わすだけでも、再接続のシグナルは国際市場に伝わる。
一方で、会談が象徴に終われば失望も残る。関税や輸入規制は国内政治の力学を背負い、譲歩の余地が限られるからだ。安全保障や人権の課題も横たわる。まずは通商行政の実務レベルで、キャノーラとＥＶをめぐる具体的な火種を一つずつ整理できるか。首脳会談の成否は、その段取りにかかっている。
