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与野党の議員が相次いで声を上げた。中国の薛剣・駐大阪総領事がX(旧ツイッター)に暴力的な文言を書き込んだとされる件で、自民党は11日に関係部会の合同会議を開き、政府に厳正な対応を求める決議を採択した。対象は国外退去を含む強い措置に及び、外交の現場で許容される線引きを問い直す動きが広がっている。
広がる反発と決議の行方
自民党は外交調査会と外交部会を合同で開催し、問題の投稿を「日本国民への侮辱であり、日中関係を傷つけた」と位置づけた。決議は「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」の指定を含め、政府に毅然とした対応を迫る内容だ。外交官の身分に配慮しつつも、境界線を明確にするべきだという空気が会合を覆っていた。
会議後、中曽根弘文外交調査会長らが官邸に申し入れを行い、政府側の対応をただした。立憲民主党の安住淳幹事長は「関係に何らプラスにならない」と批判し、国民民主の玉木雄一郎代表は「度を超している」と述べ、退去要求の可能性に触れた。与野党の言葉遣いは異なるが、外交官の規律という一点では足並みがそろった。
公明党の斉藤鉄夫代表は中国側に懸念を伝達したと明かし、「どう喝とも取れる発言は外交官にあるまじきものだ」と語った。共産党の田村智子委員長も、緊張を高めない努力の重要性を説いた。支持層の違いを越えて反発が並び立つ様子は、政治の対立軸とは別に、外交儀礼の基本線を守るべきだという共有感覚を映しているように見える。
発端となった投稿と国際的な波紋
発端は、総領事がXに記したとされる一文だ。「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」。挑発的で暴力性を帯びた表現は瞬く間に拡散し、国内では不安と怒りが交錯した。高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁への反発とみられるが、外交官の公的な言葉として看過できない、という反応が主流になった。
今回の発信は、在外公館の要職にある人物がSNSで過激な言辞を用いた点に特徴がある。外交官は任地国の世論を注視し、言葉に最も慎重であるはずだという期待がある。駐在国の市民を威圧するように響く表現が出た時点で、議論の焦点は真意の解釈から規範の逸脱へと移った。海外の要人からも懸念が示され、波紋は公館の外へ広がった。
近年、外交の現場におけるSNS運用は不可欠になった。だが、短い文言は緊張を瞬時に増幅し、発信者の肩書が重くのしかかる。削除や訂正が追いつかない速度で解釈が固定されることもある。今回の一件は、個人の表現と公的な立場の線引き、そして広報と挑発の境目を、改めて問い直す材料になっている。
法的枠組みと日本側の選択肢
外交官の行為に対する受け入れ国の権限は、「外交関係に関するウィーン条約」に定めがある。最も強いカードが、受け入れを拒む意思を示すペルソナ・ノン・グラータの通告だ。これは刑罰ではなく外交上の措置で、通告を受けた側は当該の外交官を引き揚げさせる。今回も、決議が示した選択肢の中心にこの措置が置かれた。
仮に通告に踏み切る場合、外務当局は理由に触れつつ相手国に通知し、一定の期間内に出国を求めるのが通例だ。手続き自体は明快だが、同時に相互主義の連鎖を招きやすい。相手国が自国の在外公館に対して鏡のように措置をとる可能性があるため、現地の邦人や企業活動への影響も慎重に勘案される。
他方で、表現が市民の威圧と受け取られた場合に、黙認すれば規範が緩むとの懸念も根強い。政府にとっては、関係悪化のリスクと規範維持の意義を天秤にかける局面だ。今回、与野党が横並びで「線」を示したことは、判断の背骨になり得る。政治の思惑を越え、制度の堅牢さを確かめる作業が静かに進んでいる。
政治の文脈とこれから
高市首相の国会答弁は、台湾海峡の平和と日本の安全保障の関係を改めて可視化した。そこへ挑発的な表現が重なり、国内では規範を守るかたちでの反応が広がった。過去にも一部の外交官がSNS発信で物議を醸した例はあるが、今回は与野党の受け止めが近い点が異なる。安全保障論議の緊張が、外交儀礼の堤を越えないようにするための線引きが、今まさに問われている。
官邸の通用口に、決議文を収めた封筒が静かに消えていく。変化の兆しは、まだ小さい。