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中国軍の戦闘機が沖縄本島の南東の公海上で航空自衛隊機にレーダーを照射した問題で、小泉進次郎防衛大臣は9日、中国側が主張するような訓練海空域の事前通報は「認識していない」と国会で述べた。危険な行為だとして中国を改めて批判し、事実関係をめぐる溝が一段と鮮明になっている。
レーダー照射の現場で何が起きていたか
防衛省によると、6日午後、沖縄本島南東の公海上で、中国海軍空母「遼寧」から発進したJ-15戦闘機が、領空侵犯対処にあたっていた航空自衛隊のF15戦闘機に対し、断続的にレーダーを照射した。レーダー照射は攻撃準備とも受け取られ得る行為で、機体や乗員に被害はなかったものの、日本側は直後から中国政府に強く抗議している。
小泉大臣は、照射当時の自衛隊機の行動について「安全な距離を保ちながらプロフェッショナルに対応していた」と説明し、中国側が訴える「妨害」は事実でないと退けた。また、戦闘機に搭載されたレーダーは探索だけでなく火器管制にも用いられるため、照射を受けた側には意図を見極めにくく、「安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為だ」との認識を示している。
これに対し中国側は、レーダーは捜索のために作動させた通常の措置であり、日本の戦闘機が訓練空域に接近してきたため対応したと説明している。自衛隊関係者は、悪天候時などに周辺を確認する目的でレーダーを使う場合はあるとしつつも、今回のように相手機に向けて断続的に照射する運用は自衛隊では行わないとし、現場感覚の違いが緊張を高めている構図がにじむ。
「事前通報」をめぐる食い違いと高まる緊張
中国国防当局などは、今回の訓練について海空域をあらかじめ公表し、航空情報(ノータム)や航行警報で周知していたと主張し、日本は承知のうえで飛行させたと批判している。これに対し小泉大臣は、遼寧の艦載機訓練に関するノータムや航行警報が「事前に通報されていたとは認識していない」とし、通報の有無や伝わり方そのものに疑問を呈した。双方が「正当な行動」と位置づける前提から食い違っている。
日本政府は、中国側の行為を「極めて危険」と位置づけ、北京と東京で抗議するとともに、中国大使を呼んで再発防止を求めた。高市早苗首相も、監視態勢の強化と「毅然かつ冷静な対応」を掲げ、同様の懸念を共有するオーストラリアとの防衛相会談で協力を確認している。偶発的な軍事衝突を避けるため、周辺空域での行動ルールや情報の出し方をすり合わせることが、同盟国を含む地域全体の課題になりつつある。
一方で中国の王毅外相は、日本が中国の軍事行動を「脅威」とみなす姿勢こそ受け入れられないと主張し、台湾情勢や宮古海峡周辺での日本の関与を強く牽制している。相互不信が高まるなか、レーダー照射のような一件一件が誤算やエスカレーションを招く懸念も指摘される。今回争点となった「事前通報」と「安全な距離」をどう具体的な仕組みで共有するか。緊張を抱えた海空域で、現場のリスクを減らすルールづくりが両国に突き付けられている。
参考・出典
- Radar Illumination of JASDF Aircraft by Chinese Military Aircraft
- 中国レーダー照射問題で小泉大臣「危険でアンプロフェッショナルな行為」
- 小泉大臣「自衛隊機は安全な距離保ってた」中国に反論 | 政治 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
- Japan threatening us militarily, China foreign minister tells German counterpart
- Japan PM vows ‘resolute’ response after Chinese aircraft accused of locking radar on to Japanese fighter jets
