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港に積まれたコンテナの列が、静かに動きを鈍らせている。中国のレアアース磁石輸出が9月に失速し、米国向けが大きく落ち込んだ。今月に入り中国は輸出管理をさらに強め、米中の駆け引きは一段と緊張を帯びる。電動化と防衛の基盤部材を巡る地政学の影が濃くなっている。
数字が冷たく告げる変化
税関統計によれば、レアアース磁石の輸出総量は8月の6,146トンから9月は5,774トンへと6.1％減った。前月まで3カ月連続で伸びていた流れが途切れ、足元の需給と許認可の揺れが表に出た格好だ。季節性だけでは説明しきれない減速感がにじむ。
仕向け先を見ると、米国向けが前月比で28.7％減と下げ幅が目立つ。欧州ではオランダ向けが前月比で倍増超となる一方、域内全体では勢いが鈍った。港湾のハブを経由した振り替えや、ライセンス審査のタイミングが輸出量の波を作っていると映る。
上位の仕向け先はドイツ、韓国、ベトナム、米国、メキシコの順で、産業集積地への流れ自体は続く。とはいえ、米国向けの急減は製造業の在庫運用や代替調達を促すシグナルになりかねない。供給の手綱が引き締まるたびに、企業は静かな路線変更を迫られている。
規制の網はどこまで広がるか
中国は10月に入り、レアアース関連の輸出管理を拡張し、対象物品や装置の範囲を広げた。輸出には許可申請が必要で、防衛関連に関わる用途は厳格に審査すると示している。4月の措置では磁石の一時的な供給不足が生じ、自動車工場の停止が相次いだ経緯がある。
今回は国外メーカーにも一定の管轄を及ぼしうると解釈される点が特徴だ。中国由来の素材や装置を用いた製造品について、販売に当たって中国側の承認が要る場合があるとされ、供給網の外縁まで規制の影が伸びる。執行の手段や範囲はなお不透明さも残る。
一方で中国当局は、民生用途の正規取引は引き続き認める姿勢もにじませている。輸出ライセンスの審査は強まったとの見方が出る半面、申請の円滑化を図るとする説明もある。安全保障と産業需要のはざまで、制度運用の微妙なさじ加減が続くとみられる。
ホワイトハウスの言葉と交渉の行方
19日、トランプ大統領はフロリダからワシントンへ向かう機内で、レアアースを巡る「駆け引き」は望まないと語った。米国産大豆の購入など通商項目と絡めつつ、中国に対し過度な圧力をかけないよう牽制する狙いもうかがえる。首脳間の再交渉を前に、言葉の温度が探られている。
米中の関税休戦は11月10日に期限を迎える見通しで、今月下旬には首脳会談の開催が見込まれるとの報もある。臨界部材の供給が交渉の舞台に上がれば、電気自動車や風力、半導体から防衛まで、広い産業で設計変更や在庫の積み増しが進む可能性がある。静かな備えが広がっている。
