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短期の上陸許可が切れたあとも日本にとどまったとして、福岡県警臨港署が5日、中国籍の21歳の男性を出入国管理法違反(不法残留)の疑いで逮捕した。男性はクルーズ船で入国し、日本で暮らし続けたかったと認めているとされる。観光客として一時的に港町を訪れた若者が、なぜ不法残留という一線を越えてしまうのか。今回の逮捕は、巡り始めた国際クルーズと日本の水際対策の揺らぎを静かに映し出している。
若いクルーズ客が越えた一線
逮捕された男性は、住所も職業も明らかでないままクルーズ船で日本に入り、与えられた上陸許可の期限を過ぎても出国しなかったとされる。臨港署は、不法残留に至るまでの経過や、滞在中にどこで過ごしていたのかなどを慎重に調べている。本人は「日本に住み続けたかった」と話しているとされ、観光を終えて帰国する「一時の客」としてではなく、日本社会の一員として暮らしたいという思いが、制度から外れたかたちで噴き出した格好だ。
クルーズ船は、一度に多くの人を運び込む観光インフラとして福岡などの港町に経済効果をもたらしてきた。他方で、船舶観光客の中には入国後に姿を消す人もおり、2010年代半ばにはクルーズ船で来日した外国人が約3年半で171人行方不明になったと報じられている。最近では、沖縄県那覇港でクルーズ船から海に飛び込んで上陸したトルコ人の男が逮捕されたり、長崎で国際クルーズ船に戻らなかった中国籍の女性が不法残留の疑いで摘発されたりする事案も起きている。若い男性の「日本に住み続けたい」という願望は特別なものではないが、その叶え方が制度の外側に置かれている現実が、こうした事件を繰り返させている。
水際対策と港町が背負う重さ
全国的にみると、不法残留や不法就労は決して少なくない。出入国在留管理庁の統計によれば、2023年には退去強制手続きの対象となった外国人が約1万8千人に達し、その多くが在留期限を超えて滞在していた人々だったという。コロナ禍後に観光客や労働力として外国人の往来が回復する中、入管当局は違法な滞在を取り締まりつつ、人権への配慮や収容の在り方を巡っても議論を抱えている。今回の福岡の事案も、単なる一逮捕事例にとどまらず、「短期で来た人が長くいたいと感じたとき、どのような選択肢を用意できるのか」という問いを突きつけている。
一方、政府は「外国人との共生」を掲げ、外国人も地域社会の一員として安心して暮らせる社会と、安全・安心な治安の維持という二つの目標を並び立たせようとしている。クルーズ船の寄港でにぎわう港町は、その最前線に立たされる存在だ。観光振興を支える事業者や住民にとっては、不法残留の報道が続けば不安や偏見が広がりかねない一方で、行き過ぎた監視や排除は訪日客の萎縮を招く。福岡での逮捕をきっかけに、誰もが過度な疑いの目にさらされずに済む水際対策の仕組みと、外国人が合法的に生活基盤を築ける制度の整え方を、あらためて考える必要があるだろう。
