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秋晴れの首相官邸に閣僚らが足早に入る。政府は4日、外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議の初会合を開いた。高市早苗首相は、外国人による土地取得ルールの見直しや出入国・在留管理の厳格化を柱に、実行可能な策は順次進め、来年1月を目途に基本方針を示すよう指示した。排外主義と一線を画しつつ、違法行為には毅然と臨む姿勢を前面に出した構図である。
初会合が映した危機感と道筋
会議の空気は硬い。冒頭、高市首相は「国民が不安や不公平を感じる状況が生じている」との認識を示し、社会の受け止めに丁寧に応じる一方で、ルールを外れる行為への対処を強める必要性を語った。排除ではなく統治の更新を目指す、といった含意がにじむ。官邸の場で語られたのは、移動と観光、就労が重なり合う時代にふさわしい秩序の描き直しである。
議題は大きく2本柱だ。1つは土地取得のルール整備で、所有や利用の実態を適切に把握し、国土の利用を透明化する方向性が示された。もう1つは在留・出入国管理の厳格化で、不法滞在や制度の不適切な利用に対する実効的な対応を求めた。あわせて、保険料や医療費の制度適正化、観光の集中で起きるオーバーツーリズムへの対策も俎上に載ったとみられる。
首相は「スピード感」を繰り返した。実施可能な施策は前倒しで打ち出しつつ、来年1月を目途に総合的対応策として基本的な考え方と方向性を示す段取りだという。政府横断で連携するための推進担当の設置と、関係閣僚の連携強化も明確化された。会議体に司令塔機能を持たせ、点在する制度を束ねて運用する狙いが浮かぶ。
土地と入管、何が変わり得るか
最初の焦点は土地である。政府は「国土の適切な利用と管理」を掲げ、誰がどの土地をどのように所有・利用しているかを見える化する方向を打ち出した。実態把握の強化や情報連携の仕組み作りが検討対象となり、登記や取引の透明性を高めることで、地域の安心と市場の信頼を両立させる発想がにじむ。土地という長期資産の扱いに秩序を取り戻す意図と映る。
次の焦点は在留と出入国管理だ。制度の厳格化は、不法滞在や虚偽申請への対処を迅速化する一方、適法に暮らす人が不利益を被らない運用が不可欠である。入国前後の審査や在留更新時のチェック、自治体や関係省庁とのデータ連携など、実務の細部が政策の成否を分ける。支援と規律の線引きを、現場の負荷に耐える形で描けるかが問われる局面だ。
社会保障と観光の課題も横たわる。保険料や医療費の制度適正化は、負担と受益のバランスを整える作業であり、短期滞在や就労形態の多様化に制度が追いつく設計が求められる。観光地の混雑や迷惑行為への対応は、受け入れ側のキャパシティー整備とルールの周知が両輪となる。共生を機能させるには、地域ごとの実情に応じたきめ細かな手当てが欠かせない。
体制面では、会議の議長を木原稔官房長官が務め、副議長に小野田紀美経済安全保障担当相や平口洋法相が加わる構えだと報じられている。閣僚横断の合意形成を前に進める布陣で、年末に向けて検討の密度を高める運びだ。首相官邸で舵取りを担う官房長官が主宰し、所管横断の課題を束ねる実務配置は、司令塔強化の流れに沿うものといえる。
司令塔再編の背景と連続性
今回の初会合の背景には、政府内の司令塔再編がある。7月15日、内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置され、関係府省の力を束ねる事務局が動き始めた。外国人材の受け入れと地域社会の安心、双方の要請が高まるなかで、点の取り組みを線にし、面へ広げるための体制づくりである。政策を貫く背骨を官邸主導で通す段階に入ったとみられる。
この動きは、従来の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を土台に、名称と役割を再設計した延長線上にある。人口減少と人手不足に直面しつつ、迷惑行為や制度の不適切利用への目配りも求められる現実がある。初会合での首相発言は、成長のための受け入れと社会の安心の確保を同じテーブルに載せ、優先順位ではなく整合性で解く姿勢を打ち出したと読める。
現時点で確認されている範囲では、政府は来年1月に総合的対応策の方向性を示す計画だ。制度の厳格化は現場の運用で初めて力を持ち、共生の支援は制度の信頼を底から支える。官邸前の夕暮れ、国旗が静かに揺れる。土地と人の流れをめぐる線引きは、生活の手触りにどのような変化をもたらすのか。足元を確かめるような慎重さが、いまほど求められている時はないだろう。
