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霞が関の会見室に人の気配が濃くなったのは、2025年10月10日の昼前だった。鈴木馨祐法相がマイクに向かい、6月末時点の在留外国人数が395万6619人と過去最多を更新したと告げた。昨年末比5.0%増、総人口に占める割合は3.21%。年末見通しは415万人とし、観光・就労・留学の往来が戻る中で、社会の受け皿づくりを急ぐ必要があると映る発表だった。
広がる在留の裾野が示すもの
法相は在留外国人の増加を「社会の活力と課題の両面を映す鏡」と表現した。6月末の総数395万6619人は、統計の節目を刻む数字だ。昨年末からの5.0%増は、コロナ禍後の回復が一巡し、留学生や技能分野の入国が波状的に戻ったことが背景にあるとみられる。一方で、地域の言語支援、住まい、教育、医療など、共生の基盤整備は待ったなしという現実も浮かぶ。
数字は均質ではない。企業の採用は都市圏に偏り、地方は人手不足の穴を技能人材で埋める構図が続く。保育や介護の現場では、外国人職員が「いないと回らない」という声が広がっている。他方、住宅確保や保証人の負担、偏見の壁に直面する例もまだ少なくない。受け入れとルールをどう両立させるか。会見場では、制度の微調整だけでは追いつかない現場の息づかいがにじんだ。
鈴木氏の経歴を振り返れば、国会で法務行政に長く関わり、委員長も務めた実務派だ。就任後は司法・入管双方の課題に目配せしてきた。今回の数字に対しても、拙速な規制強化か過剰な緩和かという二項対立ではなく、データに基づく運用の見直しで現場の滞りを解いていく姿勢が見える。静かな会見室に、丁寧に語を選ぶ口調が続いた。
旅行需要の波、入国者数が押し上げる
2025年上半期の外国人入国者数は2137万6170人で、前年同期比20.0%増となった。四半期ごとの伸びを追うと、春の大型連休と各国の休暇シーズンが押し上げに寄与したとみられる。航空路線の回復と円安の継続が背中を押し、再訪者の定着も進んだ。年間では4500万人規模に達し、過去最高を更新する可能性があるとの見方が広がっている。
ただし、入国者数の膨らみは、在留の長期化や目的の多様化という別の課題を伴う。観光と就労、留学と家族滞在が折り重なる現実に、各制度の接点で生じる手続の遅延が目立つ場面もある。自治体の窓口や学校現場からは、通訳配置の確保、母語支援の人材育成、生活情報の多言語化といった「足回り」の強化を求める声が上がる。数字の勢いを、居場所づくりの力に変えられるかが問われる。
為替や地政学の揺らぎも不確定要素だ。一部報道によれば航空運賃の高止まりや宿泊料金の上昇が抑制要因になるとの見立てもある。政府は消費動向のきめ細かな把握と、混雑の平準化、地方誘客の強化で裾野を広げるとする。観光と在留が交差する地点で、制度の継ぎ目を滑らかにする作業が続くと映る。
「不法滞在者ゼロプラン」進捗の手応えと揺らぎ
鈴木氏は5月に打ち出した「不法滞在者ゼロプラン」の進捗にも触れた。6〜8月の3カ月で護送官が同行する国費送還は119人となり、前年同期の58人から倍増したという。空港での引き継ぎや安全確保のためのオペレーションを強化した結果と説明した一方、送還者全体は2120人で前年同期とほぼ同水準にとどまった。取り締まりの強度と人道的配慮の両立という難題が改めて浮かぶ。
ゼロプランは、ルールを守る人の受け入れと、違反者への厳格対応を車の両輪とする設計である。5月の会見で示された方針では、送還執行の体制整備、退去強制手続の迅速化、ブローカー対策などが柱だ。現時点で確認されている範囲では、執行の実数は着実に積み上がるが、国籍・地域ごとの事情や受け入れ国の協力の度合いで進捗が左右される局面も残る。現場の裁量に委ねられる余地が大きいだけに、透明性ある検証が欠かせない。
制度は人に宿る。送還手続に携わる担当者の負担、地域社会の目線、そして本人の生活史が絡み合う。数字は冷徹だが、運用は温度を帯びる。会見での説明を受け止めるなら、求められるのは二極化ではない。法の厳格さを保ちつつ、共生の現場が回り続けるための実装である。議論の射程を広げ、検証と改善のループを速められるか。秋晴れの気配が残る省内に、次の一手を促す空気が漂っていた。