クピャンスク9割掌握、ウクライナ軍が主張、露は否定

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2025.12.18

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ウクライナ軍のシルスキー総司令官は2025年12月17日、東部ハルキウ州の要衝クピャンスクでロシア軍を押し戻し、市域の「ほぼ9割」を掌握しているとテレグラムで表明した。一方、ロシアのベロウソフ国防相は同日、テレビ放映された国防幹部会合で、ウクライナ軍の反撃は成功していないとの立場を示した。

「9割掌握」が住民の安心に直結しない

クピャンスクは鉄道の結節点で、補給や部隊移動の観点から両軍が譲りにくい街だ。ただ、前線の街で語られる「掌握」は、役所の看板を守るというより、通れる道を確保し、砲や無人機の射程をずらし、相手の補給を細らせるという作戦上の言葉でもある。市域の大半を抑えたとしても、川沿いや工業地帯などに火点が残れば、夜に灯りをつける生活は戻りにくい。

加えて、現地の状況は独立した検証が難しい。Reutersも、戦況を独自に確認できないとしている。街が「ほぼ破壊された」とされる中では、占領か奪還かの線引き自体が曖昧になりやすい。気にするべきは、地図上の色分けよりも、砲撃の頻度が下がったのか、補給路が安定したのか、避難した人々が戻れる条件が整ったのかという、暮らしの指標のほうだ。

前線の戦果が、そのまま外交の材料になる

今回の食い違いは、突然始まったものではない。ロシア側では2025年11月、ゲラシモフ参謀総長がプーチン大統領にクピャンスクを掌握したと報告したとReutersが伝え、ウクライナ側は否定してきた。つまり、同じ地名が「取った」「取り返した」という主張の往復の中に置かれている。戦線の押し引きに加えて、国内向けの士気、同盟国向けの支援継続、交渉での立ち位置が絡み、言葉は武器になる。

ゼレンスキー大統領が先週クピャンスクを訪れ、前線での成果が外交の結果に結びつくとの考えを示した、という流れもある。譲歩の圧力が強まる局面では、象徴的な街の攻防が「交渉の前提」を形づくりやすい。だからこそ、次の焦点は、占拠率の数字そのものより、数日から数週間の単位で前線が固定されるのか、ロシア側が再投入で奪い返しに来るのかという持久戦の局面である。

「9割掌握」が住民の安心に直結しない

前線の戦果が、そのまま外交の材料になる

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