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国会の廊下に緊張が走ったのは2025年10月16日の午後だ。自民党と日本維新の会が連立を視野に政策協議を開始し、災害時に首都機能を支える「副首都構想」で方向性を共有した。一方で、企業・団体献金の廃止や食料品の消費税ゼロなど、合意に至らない論点も浮かんだ。再協議は2025年10月17日に続く見通しである。
副首都で近づき、資金規制で距離が出た
16日、国会内で両党幹部が向き合い、連立を視野に入れた協議が動き出した。維新側は象徴政策である副首都構想と社会保障改革を要の柱に据え、自民側に受け入れを求めた。場の空気は張り詰めつつも、災害時の首都中枢機能のバックアップという目的では共通認識がにじみ、議論の糸口が見えたと映る。
前日の2025年10月15日には、高市早苗総裁が吉村洋文代表、藤田文武共同代表と会談し、首班指名選挙での協力要請を含む本音の打診を行った。翌16日から当事者と両党の政調会長で政策協議に入る段取りを確認し、形としては与野党の距離が一気に縮まった。水面下で重ねた打ち合わせが、表舞台にせり上がった格好である。
ただ、看板同士がぶつかる項目では溝も深い。維新は企業・団体献金の「廃止」を強く掲げ、自民は持ち帰って精査する段階にとどまった。維新が提示した要望は12項目とされるが、報道によっては「10項目程度」との伝え方もあり、交渉の射程に幅がある。いずれにせよ、政治とカネをめぐる基準づくりで両党の姿勢が試される構図が浮かぶ。
維新の「政治とカネ」、引き気味の前進
維新は企業・団体献金の廃止を譲れぬ一線として掲げるが、交渉の現場では「現実」を見据えた柔軟さもにじむ。廃止に至る道筋の設計や段階的な規制強化など、折衷案の地平を探る姿勢が読み取れる。政治資金をめぐる透明性向上は有権者の関心が高く、早期にルールの骨格を描けるかどうかが共闘の試金石になるとみられる。
藤田共同代表は協議の進め方で「旗」を下ろさずに交渉の余地を残す構えを示し、吉村代表も「絶対条件は副首都構想と社会保障改革」と強調したうえで、政治資金分野では一定の歩み寄りを示唆した。強硬と現実路線の間でバランスを取る動きであり、与党側の応答次第で落としどころが変わる。交渉の温度感は一段と上がっている。
党内世論の振れ幅も無視できない。維新の両院議員総会では慎重論が出つつも、執行部一任で交渉に踏み出した。泥舟論と政策実現のリアリズムの間で、議員たちの言葉は揺れたが、最終的に「結果を持ち帰る」覚悟が前に出た。政治とカネの線引きは、次の国会運営の信頼にも直結するだけに、譲れない圧力が双方にかかっている。
時間との勝負、優先順位が問われる
協議は2025年10月17日にも続き、数日のうちに国会対応の全体像を描く必要がある。食料品の消費税を2年間ゼロにする案や、国会議員の定数削減といったインパクトの大きい提案は、財源や制度設計の緻密さが問われるため、一気呵成の合意は難しいとみられる。優先順位をどこに置くかが、交渉の羅針盤になる。
副首都構想は、地震や風水害が頻発する現実の前で説得力を帯びる。東京一極集中のリスクを減らし、国政の継続性を担保する政策として、自民と維新の親和性が高い分野だ。ここで合意の実績をつくり、政治資金や減税など難所の交渉に弾みをつける狙いが双方にあるはずだ。災害対策の強化という国民生活の実益も見据えたい。
今回の協議は、価値観の近さを確かめ合いながらも、線を引くべきところでは引くという、大人の交渉の様相を帯びる。副首都構想で信頼を積み上げ、政治とカネで透明性の基準を示すことができるのか。与野党の駆け引きが最終局面に入る中で、次の一手に政権の骨格が映る。
