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東京の静かな応接室で、与野党の距離が一歩縮んだ。10月5日に自民党の高市早苗総裁と国民民主党の玉木雄一郎代表が都内で会談し、6日には自民の麻生太郎最高顧問と国民民主の榛葉賀津也幹事長が約30分向き合った。連立の枠組み拡大も視野に、政策面での協議を進める地ならしが始まったとみられる。現時点で党公式の発表文は確認できていないが、複数の関係者が会談の事実関係を示唆している。
静かな会談が映す「次の一手」
6日に明らかになったのは、5日に高市総裁と玉木代表が都内で向き合っていたという事実である。場所や詳細なやり取りは伏せられているが、双方が今後の連携のあり方をにらみ、政策面での摺り合わせに踏み込んだとみられる。政権運営の安定を求める自民と、政策実現の回路を太くしたい国民民主の思惑が交差した場面が浮かぶ。
同日6日には、麻生最高顧問と榛葉幹事長が別途、約30分間の協議に臨んだ。榛葉氏は、ガソリン税の旧暫定税率の扱いや、いわゆる「年収の壁」の見直しなど、昨年12月に自民・公明・国民民主の幹事長レベルで確認された合意項目の履行を求めたとされる。そのうえで「信頼関係の醸成に応じて連携の形は変わる」との考えを伝えたという。
各会談の内容は非公開で、公式リリースもまだ見当たらない。現時点で確認されている範囲では、連立交渉に直ちに踏み込む段階ではなく、政策合意の積み上げを優先する空気が強いと映る。誰に有利かと問えば、与党は国会運営の選択肢を増やし、国民民主は“合意の履行”をテコに政策実現の歩を進める狙いがにじむ。
交わる政策、ずれる距離
高市氏と玉木氏は、積極財政を通じて賃上げと成長を取りにいく方向で重なる。玉木氏は6日、株価上昇に触れつつ、高市新総裁の経済政策への期待感をX上で示した。市場の期待と政治の合意形成が一致すれば、年末に向けた経済対策の規模感を左右しかねない。期待先行か、実需に結びつくか。視線はそこに集まっている。
国民民主はかねてガソリン税の旧暫定税率分、1リットル当たり25.1円の負担軽減を主張し、トリガー条項の凍結解除を求めてきた。いわゆる「年収の壁」についても、働き手の就業抑制を和らげる設計を打ち出している。高市氏も暫定税率の見直しや壁の引き上げに前向きとされ、家計と現場に届く政策で歩調を合わせやすい土壌があるとみられる。
一方で、連立に対する温度差は残る。国民民主は「自民と同一視されること」への警戒感を隠さず、まずは合意履行と信頼醸成を優先する構えだ。外国人政策の厳格化や情報保全の強化、そして憲法改正や安全保障の基本路線では重なる点が多いものの、連携の速度と見せ方には慎重さがにじむ。距離は縮むが、重ね方は丁寧にという姿勢である。
連立の現実味と計算
自民側は、法案処理を安定させる多数派の形成をにらみ、政策協議を精力的に進めたい構えだ。仮に交渉が進展すれば、国民民主に閣僚ポストを提示する選択肢もテーブルに上ると語られる。だが人事の話は常に結果論であり、今は政策の優先順位と実行手段を詰める段階にあると映る。拙速な枠組み先行は、むしろ反発を招きかねない。
焦点は三つある。第一に、ガソリン税や就業調整の是正といった可視的な家計支援をいつ、どの規模で実行に移すか。第二に、経済安保や情報保全など条文作業が要る法案群をどこまで共有できるか。第三に、次期予算編成と補正の設計で「分配と成長」の配分をどう描くかである。いずれも連立の実利に直結する。
偶然の接近か、必然の収斂か。鍵を握るのは、12月合意の履行度合いと、それを担保する工程表だろう。合意が動けば、信頼は形を持ち始める。現時点では「政策先行の協議」が主旋律だが、年末の与野党の駆け引き次第で、連携の形は一気に現実味を帯びる可能性がある。静かな会談の連なりが、次の政治の輪郭を描きつつある。
